ワイルド・アパッチ

ワイルド・アパッチ：容赦なき追跡劇と、その背景にある影

『ワイルド・アパッチ』（原題：Ulzana's Raid）は、1972年に公開された西部劇映画です。アメリカ南西部を舞台に、アパッチ族の戦士ウルザナとその一団による脱走劇と、彼らを追跡するアメリカ軍の部隊の戦いを描き、その過酷さと悲劇性を鮮烈に映し出しています。

物語の展開:

アパッチ族の戦士ウルザナは、仲間たちと共に居留地から脱走します。この知らせを受けたローウェル砦では、少佐率いるアメリカ軍が追撃を開始。偵察兵のマッキントッシュと、追撃隊を率いるデ・ビュイン少尉が、ウルザナ追跡の中心人物となります。アパッチ族に詳しいケ・ニ・テイの協力を得ながら、追撃は始まりますが、ウルザナたちは残虐な襲撃を繰り返します。農家を襲撃し、住民を殺害、女性を陵辱するなど、彼らの行為は次第にエスカレートしていきます。

追撃隊は、手掛かりを頼りにウルザナたちを追いますが、困難な地形と敵の巧妙な罠に苦戦します。当初はウルザナに一定の理解を示していたデ・ビュインも、その残虐性に怒りを覚えるようになります。物語の中盤では、ケ・ニ・テイの機転によって、ウルザナの息子が射殺される場面も。息子の遺体に対する兵士たちの冷酷な仕打ちを制止するデ・ビュインの姿は、彼の人間性を際立たせています。

追撃は山岳地帯へと移り、ケ・ニ・テイの作戦に基づいた巧妙な罠が仕掛けられます。しかし、予期せぬ事態により、作戦は失敗。追撃隊は、絶体絶命の危機に瀕します。激しい銃撃戦の末、ウルザナたちのアパッチ族は壊滅。ウルザナ自身も、ケ・ニ・テイによって射殺されます。

制作背景と評価:

本作は、実際に起きたアパッチ族の襲撃事件を基に、アラン・シャープが脚本を執筆。1956年の名作西部劇『捜索者』から強い影響を受けていると言われています。シャープは、本作について「世界の悪意と恐怖に直面した人々を寓意的に表現しようとした」と述べています。

主演はバート・ランカスター。彼は、ロバート・アルドリッチ監督作品には18年ぶりの出演となりました。アリゾナ州やネバダ州でのロケ撮影によって、アメリカの広大な荒野がリアルに描写されています。また、製作にはランカスターも参加したため、アルドリッチ編集版とランカスター編集版の2種類のバージョンが存在するという特殊な経緯も持ちます。

批評家の評価も高く、ジーン・シスケルやヴィンセント・キャンビーなど、著名な評論家から高い評価を得ています。特に、ベトナム戦争の影を反映したニヒリズム的な描写が注目されており、アメリカ軍の苦悩や戦争の残酷さを暗示しているとして解釈されています。

関連作品と参考文献:

本作は、『捜索者』、『ダンディー少佐』、『レッド・ムーン』、『ソルジャー・ブルー』などの西部劇作品と関連付けて語られることが多いです。また、アパッチ族の文化や歴史に関する資料も、理解を深める上で役立ちます。

参考文献として、David Lustedによる『Directory of World Cinema: American Hollywood』や、Ben Sachsによるシカゴ・リーダー誌の記事などが挙げられます。これらの資料は、映画の背景や解釈をより深く理解する上で参考になります。

まとめ:

『ワイルド・アパッチ』は、単なる西部劇を超えた、戦争と暴力、人間の業を描いた深遠な作品です。残虐なアパッチ族の襲撃と、彼らを追うアメリカ軍の苦悩、そしてその背後にある歴史的背景を理解することで、この映画の持つ真価を改めて知ることができるでしょう。

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