ワシミミズク

ワシミミズク（Bubo bubo）

ワシミミミズクは、フクロウ目フクロウ科に属する大型の鳥類で、ユーラシア大陸に広く分布しています。極地圏と熱帯を除くユーラシア大陸の大部分に生息し、地域によって様々な亜種が存在します。

分布

ワシミミズクは、ヨーロッパからアジアにかけて広範囲に分布しています。日本では、かつては迷鳥として記録されるのみでしたが、その後の調査で北海道北部で数つがいが繁殖していることが確認されました。また、北方領土の国後島や択捉島にも少数が留鳥として生息しています。

形態

ワシミミズクは、全長58-71cm、翼開長152-180cmにもなる大型のフクロウです。メスはオスよりも大きく、体重はオスが1.5-1.8kgなのに対し、メスは1.75-4.2kgにもなります。羽色は赤みのある黄褐色かクリーム色で、全体に不規則な縞や斑があります。虹彩は橙色で、くちばしは黒色、足指まで羽毛で覆われています。

分類

ワシミミズクは、地域によって多くの亜種に分類されています。代表的な亜種としては、以下のものがあります。

Bubo bubo bubo: スカンジナビア半島からロシア西部にかけて分布
Bubo bubo borissowi: サハリン、千島列島に分布（和名：ワシミミズク）
Bubo bubo kiautschensis*: 中国東部、朝鮮半島に分布（和名：タイリクワシミミズク）

生態

ワシミミズクは、人里離れた大森林や岩場、荒れ地などに生息し、一年中同じテリトリーに留まります。昼間は樹木の枝や岸壁で休み、夜になると活動を開始します。獲物を待ち伏せし、音もなく近づいて捕食します。主に齧歯類やノウサギなどの哺乳類、サギやノスリなどの鳥類、爬虫類、カエル、昆虫などを食べます。

繁殖期は3-5月頃で、岩棚や大木のうろ、カラスの古巣などを利用して営巣します。巣材はほとんど使わず、一度に2-3個の卵を産みます。

人間との関係

ワシミミズクは、人間の活動による影響を受けて生息数を減らしています。登山やスキーなどのレジャー活動による攪乱や、交通事故、有刺鉄線や電線との衝突などが原因です。近年、ヨーロッパでは生息数が増加傾向にありますが、アジアでは減少傾向にあると推定されています。

日本では、1994年に北海道北部で繁殖が確認されましたが、近年では繁殖の失敗例も多く、キタキツネによる雛の捕食や採食環境の破壊が懸念されています。1997年には、国内希少野生動植物種に指定されました。

現状

環境省のレッドリストでは、絶滅危惧IA類 (CR)に指定されており、絶滅の危機に瀕しています。保護のためには、生息地の保全や、人間活動による攪乱の抑制などが重要です。

ワシミミズクは、その威厳のある姿と生態から、「夜の猛禽」として人々に畏敬の念を抱かれています。しかし、その生息は危機に瀕しており、保護のための努力が求められています。

もう一度検索