ワシーリー・サマルスキー＝ビホヴェッツ

ワシーリー・サマルスキー＝ビホヴェッツ：鉱山技師と軍人、そして元素名の由来

ワシーリー・サマルスキー＝ビホヴェッツ (1803年 - 1870年) は、ロシア帝国の軍人であり、鉱山技師として傑出した経歴を持つ人物です。彼の名は、鉱物サマルスカイト、そして元素サマリウムの命名に深く関わっており、人物名が元素名の由来となった最初の人物として知られています。

生涯：輝かしい軍歴と鉱山行政

サマルスキー＝ビホヴェッツは、トムスク州の裕福な家庭に生まれました。地元の鉱山学校で軍による技術教育を受け、1823年に卒業。その後、コリヴァンの軍事施設やウラル鉱山の関連施設で経験を積みます。

1828年にはサンクトペテルブルクに転勤し、ロシア皇帝の閣僚補佐や鉱山部主任など要職を歴任。着実にキャリアを積み重ね、1834年に大尉、1845年には大佐に昇進しました。

1846年には鉱山技術部隊のチーフスタッフに任命され、1861年までその職務に就きました。この間、鉱山技術部隊の教育改革にも尽力し、科学評議会の一員にも選ばれています。1860年には中将に昇進、1861年には鉱山技術部隊の最高責任者となり、さらにロシアの鉱業憲章改訂委員会の委員長にも就任しました。

1862年には3ヶ月間の長期休暇を取得し、ロンドン万国博覧会にも参加。数々の功績により多くの勲章を受章した、非の打ち所のない経歴を持つ将校でした。1870年に死去しました。

サマルスカイトとサマリウムとの関わり：偶然の産物

サマルスキー＝ビホヴェッツ自身は、サマルスカイトやサマリウムの研究に直接関与していません。彼の貢献は、ウラル山脈で産出された鉱物標本の提供を、ドイツの鉱物学者グスタフ・ローゼに許可したことでした。

グスタフ・ローゼは1839年、この標本を新規の鉱物として発表し、「uranotantalum」と命名しました。しかし、1846年から1847年にかけて、グスタフの兄弟であるハインリヒ・ローゼが、この鉱物の主要構成元素がニオブであることを発見します。

鉱物名の混乱を避けるため、ハインリヒ・ローゼは標本提供を許可したサマルスキー＝ビホヴェッツに敬意を表し、鉱物を「サマルスカイト」と改名することを提案しました。

その後、サマルスカイトからいくつかのランタノイド元素が単離され、その中のひとつが、ポール・ボアボードランによって「サマリウム」と命名されました。こうして、サマルスキー＝ビホヴェッツの名は、元素名に冠された最初の人物となったのです。

まとめ：鉱山行政と元素名の由来

ワシーリー・サマルスキー＝ビホヴェッツは、ロシア帝国の鉱山行政に多大な貢献を果たした人物です。彼の功績は、直接的な研究成果ではなく、鉱物標本の提供を通じて、新たな鉱物と元素の発見に繋がりました。彼の名は、サマルスカイト、そしてサマリウムという形で、科学史に刻まれることとなりました。その生涯は、軍人としての成功と鉱山行政における貢献、そして偶然の産物として生まれた元素名との不思議な繋がりを示す、興味深いものです。

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