ワタナベソウ

ワタナベソウの詳細

ワタナベソウ（学名：Peltoboykinia watanabei）は、ユキノシタ科のヤワタソウ属に属する多年草です。この植物は、日本の四国と九州にのみ自生している特有種であり、絶滅が危惧されています。

特徴

ワタナベソウは、著しく大きな形状を持つため、同じ属に属するアラシグサ属とは一線を画します。ヤワタソウ属にはワタナベソウとヤワタソウの二種が存在しており、主な違いは葉の形状にあります。ヤワタソウの葉はほぼ円形で、浅い切れ込みがありますが、ワタナベソウの葉は中央部分まで深く切れ込みがあり、この二つの種を見分ける重要なポイントです。

葉と茎

この植物の根出葉は1枚であり、葉柄の長さは約30cmに達します。葉身は円形で、直径は15〜35cm、切れ込みは7〜9つあります。細長い裂片は無毛で、茎にも同様の形状の葉が数枚つきますが、サイズは小さくなります。

花

7月に花を咲かせるワタナベソウの花弁は5枚からなり、淡黄色で長楕円形をしております。花弁は8〜13mmの長さで、幅は約2.5mmで、先端は鋭く、腺毛が生えています。花は開花時に上を向き、花が終わると脱落します。花茎は30〜60cmに成長し、萼は鐘形で直径約6mm、萼裂片は三角形で長約4mmです。雄蕊は10本あり、長さは約3mmで、最初は黄色から黒紫色へと変わります。また、果実は狭卵形から楕円形を持つ蒴果で、長さは10〜13mmほどです。ワタナベソウの高さは30〜76cm程度です。

植物名の由来

ワタナベソウという名前は、1889年に高知県の名野川村で小学校教師であり植物採集家であった渡辺協によって発見されたことから名付けられました。1892年には矢田部良吉が渡辺氏に因んでこの名を冠しました。種小名の「watanabei」も渡辺氏に由来しています。属名のPeltoboykiniaは、ギリシャ語で「盾」を意味する「pelto」とアラシグサ属を表す「boykinia」を組み合わせたもので、この名はヤワタソウ属がアラシグサ属から独立したことを示しています。

分布と保護状況

ワタナベソウは主に四国の愛媛県と高知県、そして九州の深い山中に自生しており、特に熊本県では阿蘇の特定の地点で見られます。しかし、分布の範囲は極めて限られており、そのため環境省の2019年版レッドリストでは絶滅危惧II類（VU）に分類されています。また、県別のリストでは奈良県、徳島県、熊本県は絶滅危惧I類、愛媛県と高知県は絶滅危惧II類にランクされています。

栽培方法

ワタナベソウは栽培が可能で、播種や株分けによって増やすことができます。栽培には半日陰または完全な日陰が適し、均一に湿った排水の良い土壌が理想です。多少の乾燥にもある程度耐性がありますが、特に注意が必要な害虫や病気は確認されていません。

結論

ワタナベソウはその美しい花や特異な特徴により、多くの人々に愛される植物であり、保護が求められています。日本固有の植物であるこの種を守ることで、生物多様性の維持にもつながります。

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