矢田部良吉

矢田部良吉（やたべ りょうきち）

[1851年]]10月13日（嘉永4年9月19日）に伊豆国韮山（現在の静岡県伊豆の国市）で生まれた矢田部良吉は、日本の植物学の発展に大きく貢献した人物です。植物学者としての業績に加え、詩人としても才能を発揮し、多方面で活躍しました。東京大学教授として教鞭を執る傍ら、植物学の研究に尽力し、キレンゲショウマの[[学名]を命名したことで知られています。

生い立ちと教育

幼少期に父を亡くし、母の実家がある沼津で育ちました。その後、江戸に出て英語と数学を学び、横浜語学所でも学問を深めました。1869年には開成学校の教官となり、その後、大学校助教を務めました。1871年には森有礼に随行してアメリカに渡り、コーネル大学で植物学を本格的に学びました。1876年に同大学を卒業し、帰国後、東京開成学校の教授、そして東京博物館の館長に就任しました。

植物学者としての活躍

1877年には東京大学理学部教授に就任し、植物学の研究と教育に尽力しました。1882年には東京植物学会（現・日本植物学会）を設立し、初代会長を務めました。多くの植物を研究し、新種の命名にも貢献しました。

詩人としての活動

矢田部は、植物学者としてだけでなく、詩人としても才能を発揮しました。1882年には、外山正一、井上哲次郎とともに『新体詩抄』を刊行し、新しい詩のスタイルを世に広めました。また、ローマ字論者としても活動し、羅馬字会を設立するなど、幅広い分野で活躍しました。

教育者としての貢献

1886年からは訓盲唖院（後の東京盲唖学校）の校長、1888年からは東京高等女学校の校長も兼任し、教育者としても尽力しました。しかし、1891年には東京大学の教授職を非職となり、1894年には免官となりました。その後、東京高等師範学校教授となり、1898年には同校の校長に就任しました。

トガクシソウ「破門草事件」

矢田部と植物学者・伊藤篤太郎との間で、トガクシソウの命名をめぐる「破門草事件」が発生しました。伊藤が先に学名を発表していたにもかかわらず、矢田部が新属として発表しようとしたことが発端となり、矢田部は伊藤を研究室から出入り禁止にしたと言われています。

その他の活動

矢田部は、植物学や詩作以外にも、教育改革やローマ字運動など、多岐にわたる分野で活躍しました。その多才ぶりは、当時の知識人からも高く評価されました。

突然の死

1899年8月7日、鎌倉沖で遊泳中に溺死するという、不慮の死を遂げました。葬儀には多くの関係者が参列し、その死を悼みました。

家族

矢田部良吉は、蘭学者の父・矢田部卿雲と、沼津藩士の娘である母・満寿の間に生まれました。前妻に録子、後妻に順を迎え、多くの子どもをもうけました。次男の俊二は画家、四男の達郎は心理学者、五男の勁吉は音楽家として活躍しました。

栄典

矢田部良吉は、その功績により、正六位から従四位まで昇進し、勲六等瑞宝章を授与されました。

著作

矢田部は、多くの著作を執筆しました。『新体詩抄』のほか、『日本植物図解』などの植物学に関する著書を多数残しています。

矢田部良吉は、明治期の日本の学術界、文化界に多大な影響を与えた人物です。植物学者、詩人、教育者として多方面で活躍し、その業績は今もなお、高く評価されています。

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