ワルサーGew43半自動小銃

ワルサーGew43半自動小銃

ワルサーGew43半自動小銃（Gewehr 43, G43, Gew 43, Karabiner 43, K43, Kar 43）は、1943年にドイツで採用されたワルサー社製の半自動小銃です。

開発経緯

19世紀末から各国で自動装填式小銃の開発が進められていましたが、強力な弾薬を使用する歩兵銃の自動化は困難でした。ドイツでは、パウル・モーゼルが研究を進めていましたが、事故により成果を得られませんでした。第一次世界大戦の開戦と共に半自動小銃が注目され、航空機で使用するために、スイスのSIG社製モンドラゴンM1908半自動小銃が輸入されました。モーゼル社でもSelbstlader Mod.1916が開発されましたが、機構の未熟さ、重量、射撃精度の低さから地上戦には不向きでした。その後も研究は続けられましたが、重量増加や信頼性の問題から、第二次世界大戦まで新型銃の開発は難航しました。

ワルサーGew43半自動小銃の登場

第一次世界大戦後、半自動小銃の研究開発は中断されましたが、1930年代半ばに再開されました。モーゼル社やワルサー社で試作銃が製作されましたが、十分な成果は得られませんでした。ハインリヒ・フォルマーが開発したフォルマーM35A自動小銃は、性能を示しましたが、コストやKar98kの増産を優先するため開発中止となりました。しかし、半自動小銃の開発は諦められず、1940年に陸軍兵器局がワルサー社とモーゼル社に試作を命じました。ワルサー社とモーゼル社は、それぞれGewehr 41 (W)、Gewehr 41 (M)を提示し、1942年から実戦投入試験が行われました。その結果、ワルサー社製Gew41(W)がGewehr 41（G41）として制式採用されました。しかし、Gew41には問題が多く、ワルサー社は改良を促されました。独ソ戦で鹵獲したトカレフM1940半自動小銃やシモノフM1936半自動小銃を参考に、Gew41に類似したガス圧利用システムを組み込むことで、Gewehr 43が完成しました。

生産

Gew43は1943年4月30日に正式採用されましたが、量産が開始されたのは10月からです。当初はワルサー社のみが生産を担当しましたが、1944年からはベルリン・リューベッカー社とグストロフ社の2社が加わりました。全メーカー合計で462,000丁が生産されたと推定されています。ワルサー社が最大の生産社で、次いでベルリン・リューベッカー社、グストロフ社の順です。グストロフ社の兵器工場は、英空軍の爆撃により壊滅的打撃を受けたため、製造数は最小となりました。当初の生産品にはG.43と刻印されましたが、1944年4月25日に制式名称がKarabiner43に変更されたため、後の生産品にはK.43と刻印されています。Kar43はGew43の短縮型であるという情報がありますが、誤りです。戦争末期には工程の省略が見られますが、名称とは関係なく行われたもので、刻印以外に大きな違いは見られません。

特徴

Gew43は、Gew41のフラップ・ロック式ロッキング・メカニズムに、ソビエト製半自動小銃に類似したガス・ピストン方式による自動装填システムを組み合わせたものです。ガス・ピストンは分解手入れをしやすいよう、三分割構造となっています。弾薬の装填方式は、固定弾倉式から着脱弾倉式に改良され、10発の弾倉を下から装着できます。ボルトキャリアーを後退位置で固定すれば、Kar98用の装弾クリップを使って弾薬を装填できます。銃剣の着剣装置は廃止され、ライフルスコープ用のレールが標準装備となりました。アメリカ合衆国のアバディーン性能試験場における報告書では、分解清掃が容易で射撃精度は十分である一方、全体的な性能や耐久性は不十分であり、動作不良や破損が発生すると結論付けられています。作動不良や部品破損は、戦争末期の粗悪な材料や粗雑な製造が原因であり、一般的な歩兵銃としての性能は十分であったという意見もあります。ソビエト製半自動小銃や米国のM1ガーランドに匹敵するという評価もあります。

狙撃銃として

ポーランド戦後、前線指揮官からスコープ付き小銃の要望があり、陸軍兵器局はZF41をKar98kと組み合わせて制式化しましたが、性能は十分ではありませんでした。軍用狙撃銃としては、Kar98kに民間用スコープを装着したものに頼らざるを得ませんでしたが、スコープの不足や整備管理の困難さがありました。陸軍兵器局は、4倍率の軍制式ライフルスコープGwZF4を開発し、Gew43に標準仕様でGwZF4用のレールを装備させることで、狙撃銃としてのポテンシャルを持たせました。1943年8月にはヒトラーがGwZF4をKar98kやFG42、Gew43に搭載する意向を表明し、スコープ付きGew43の増産を命令しました。1944年4月にはスコープ付きGew43を「狙撃銃」と宣言しました。しかし、無理な増産により銃もスコープも不十分な仕上がりとなり、狙撃銃に求められる精度を満たすのは困難となりました。スコープ付きGew/Kar43の全数は46,042丁とされており、全生産数の10%程度でした。ほとんどのGew43は通常の歩兵銃として戦場に送られました。

参考文献

Götz, Hans Dieter, GERMAN MILITARY RIFLES AND MACHINE PISTOLS 1871-1945, Schiffer Publishing, Ltd, 1990
Law, Richard D., Sniper Variations of the German K98k Rifle, Collector Grade Publications, Inc, 1996
Senich, Peter R., The German Sniper 1914-1945, Paradin Press, 1982
Senich, Peter R., The German Assault Rifle 1935-1945, Paradin Press, 1987
* Weaver, W.Darrin, Hitler’s Garands GERMAN SELF-LOADING RIFLES of WORLD WAR II, Collector Grade Publications, Inc, 2001

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