ワルツ集 (ブラームス)

ヨハネス・ブラームスが作曲した《4手のためのワルツ集（または16のワルツ）》作品39は、ピアノ連弾のための作品集です。1865年に出版され、ブラームスの親友であった音楽評論家、エドゥアルト・ハンスリックに献呈されました。

この曲集の中で最も有名なのは、第15番であり、「愛のワルツ」という愛称で広く親しまれています。

複数の版の経緯

ブラームス自身も予想していなかったことに、このピアノ連弾曲集の楽譜は、当時のビーダーマイヤー時代における家庭音楽の高い需要に支えられ、非常に好調な売れ行きを示しました。この成功を受けて、ブラームス自身が独奏でも楽しめるように編曲した独奏版が発表されました。

しかし、元々がピアノ連弾のために書かれた楽曲であったため、独奏版は音域が広く、声部が多く、跳躍も多用されており、演奏が難しいという評価を受けました。そこで、さらに多くの人が親しみやすいように、より演奏しやすい簡易版の独奏版もブラームス自身によって作成・発表されました。

また、それとは対照的に、ブラームス自身が楽想を膨らませた2台ピアノ版も制作されました（ただし、2台ピアノ版は全16曲のうち5曲のみ）。

ブラームスの他の作品と比較すると、このワルツ集では、各曲が意図的に簡潔にまとめられている点が特徴的です。性格の異なる多様な音楽が、テンポよく次々と展開されるため、まるでショパンの「前奏曲集」作品28のブラームス版とも言えるような、雰囲気の切り替わりを楽しむことができます。

ワルツ集とは言うものの、ウィンナワルツのような形式に限定されず、レントラーに近いもの、リズムが際立ったもの、3拍子のリズムを意図的に崩したもの、スラヴ風の憂愁を帯びたもの、ハンガリー風の賑やかな曲想を持つもの、子守唄風のもの、夜想曲風のものなど、様々な趣向が凝らされています。簡潔で素朴な中に、緊密で明晰な形式感や、ブラームスならではの音楽的な趣味が凝縮された作品と言えるでしょう。

各版の調性の違い

ピアノ連弾版では、16曲全体を通して一つの音楽作品として演奏されることを意図しているため、楽曲間の調性バランスが考慮されています。しかし、ピアノ独奏版では、演奏のしやすさを優先し、原曲とは異なる調性で書かれた曲も存在します。

2台ピアノ版は、5曲のみが編曲されており、組曲として連続して演奏するというよりも、1曲ずつを独立して演奏することを前提としているため、調性の前後関係は考慮されていません。

メディア

第1番 ロ長調
第2番 ホ長調
第3番 嬰ト短調
第4番 ホ短調
第5番 ホ長調
第6番 嬰ハ長調
第7番 ホ長調
第8番 変ロ長調
第9番 ニ短調
第10番 ト長調
第11番 ロ短調
第12番 ホ長調
第13番 ハ長調
第14番 イ短調
第15番 イ長調
第16番 ニ短調

外部リンク

4手のためのワルツ集（16のワルツ）作品39の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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