ワーナー・マイカル・シネマズ

ワーナー・マイカル・シネマズ：日本のマルチプレックス映画館の先駆けとその歴史

ワーナー・マイカル・シネマズは、かつて日本全国で展開されていたシネマコンプレックスのブランド名です。イオングループのイオンエンターテイメント株式会社（旧：株式会社ワーナー・マイカル）が運営し、高い音質と快適な鑑賞環境で人気を博していましたが、2013年にイオンシネマに統合され、その歴史に幕を閉じました。本稿では、ワーナー・マイカル・シネマズが歩んできた道のりと、その特徴的なサービスについて詳細に解説します。

マルチプレックス時代の幕開けと、こだわりの設備

1993年、神奈川県海老名市にオープンした『ワーナー・マイカル・シネマズ海老名』は、日本初のマルチプレックスシネマとして知られています。当時としては画期的だったTHX認定スクリーンや、dtsデジタルサラウンドシステム、傾斜角の大きいスタジアムシートなど、最高の視聴体験を提供することに力を入れていました。複数のスクリーンを備えつつ、入口やロビー、映写室などを共有する、現在のシネマコンプレックスの原型となる設計も特徴的です。また、館内ではワーナー・ブラザースの人気キャラクターであるルーニー・テューンズを全面的に活用し、他社との差別化を図っていました。

マイカル傘下からイオン傘下へ、そして統合

当初はニチイ（後のマイカル）とタイム・ワーナーグループの合弁会社として設立されたワーナー・マイカル・シネマズは、マイカルの店舗に併設される形で全国に展開していきました。しかし、マイカルの経営破綻を機にイオングループ傘下となり、イオンのショッピングセンターを中心に、出店エリアを拡大しました。一方で、イオングループ以外の商業施設への出店事例もあり、その展開は多岐に渡りました。

2001年のマイカル経営破綻は、ワーナー・マイカル・シネマズにも大きな影響を与えました。複数の出店計画が中止となり、新規出店のペースは大きく減速しました。また、ワーナー・ブラザース・インターナショナル・シネマズが日本国内への直営劇場展開計画を撤回したことも、ワーナー・マイカル・シネマズの出店戦略に影響を与えたと考えられます。

2011年にはマイカルがイオンリテールに吸収合併されましたが、ブランド名はそのまま維持されました。しかし、2013年にはタイム・ワーナーグループが資本を撤退し、イオンの完全子会社となります。そして同年7月1日、イオンシネマズとの統合により、ワーナー・マイカル・シネマズは「イオンシネマ」へと生まれ変わりました。これにより、イオンシネマは日本国内で最も多くのスクリーン数を誇る映画興行会社となりました。

多彩なサービスと、進化する顧客満足への取り組み

ワーナー・マイカル・シネマズでは、様々なサービスが提供されていました。映画情報誌の配布や、RealD方式によるデジタル3D上映、ポップコーンやドリンクなどの販売など、快適な映画鑑賞をサポートするサービスが充実していました。また、ポイントカード制度も時代の流れとともに進化し、磁気カード式からTカード、そしてスタンプ式へと変化していきました。イオンカードやポケットカードなどの提携カードによる割引サービスも、多くの顧客に利用されていました。

数々の劇場と、その変遷

ワーナー・マイカル・シネマズは、全国各地に多くの劇場を展開していました。2013年6月30日時点での劇場数は多数にのぼり、規模や立地も多様でした。多くの劇場はイオンシネマに生まれ変わりましたが、一部は閉館するなど、その歴史の終焉を迎えた劇場もあります。 ワーナー・マイカル・シネマズブランドとしては最後の新規開業施設となったのは、2013年3月5日開館の春日部でした。

関連劇場：マイカル松竹シネマズ本牧

ワーナー・マイカル系列ではないものの、マイカルと松竹の合弁会社が運営する『マイカル松竹シネマズ本牧』は、ワーナー・マイカル・シネマズと密接な関係にありました。共通の券売券が使用できたり、人事交流もあったりと、実質的に同じ系列として扱われていました。マイカルの経営破綻後、MOVIX本牧として再オープンしましたが、後に閉館しています。

ワーナー・マイカル・シネマズは、日本におけるマルチプレックス映画館の歴史に大きな足跡を残しました。その革新的な取り組みと、顧客満足度向上への努力は、後のシネマコンプレックスの進化に大きく貢献したと言えるでしょう。その歴史は、イオンシネマという形で今も受け継がれています。

もう一度検索