ンゴロンゴロ保全地域

ンゴロンゴロ保全地域

ンゴロンゴロ保全地域（Ngorongoro Conservation Area）は、タンザニア北部に広がる自然保護地域のひとつで、主にアルーシャ州に属しています。この地域は、州都アルーシャから西へ約180kmの距離にあり、セレンゲティ国立公園やマスワ禁猟区と隣接しています。また、南西にはエヤシ湖が広がっています。

火山性地形

この地域の名「ンゴロンゴロ」は、マサイ語で「大きな穴」という意味です。その名の通り、ンゴロンゴロには「ンゴロンゴロ・オルモティ・エンパカーイ」と呼ばれる3つの火口があり、これを含めて9つの火山が分布しています。特に有名な「ンゴロンゴロクレーター」は、約300万年前に形成されたカルデラであり、火山活動とは無関係に隕石が衝突してできたものではありません。

このクレーターは外輪山が南北16km、東西19kmの広さを持ち、標高は約2400mに達します。一方、カルデラ内部の平野の標高は約1800mで、高低差が生まれています。この急峻な外輪山は、カルデラ内部から外へ出る際に多大な労力を要するため、多くの大型陸上動物は外へ出ることなく、独自の生態系が形成されています。特にキリンやインパラ以外のサバンナの動物たちは、ほとんどがカルデラ内に生息しています。

オルドバイ渓谷

ンゴロンゴロの西には、人類の起源とされるオルドバイ渓谷が広がっています。ここは人類考古学の重要な遺跡であり、直接的な人類の祖先の化石が発見されていることで知られています。

ユネスコ世界ジオパーク

2018年には、ンゴロンゴロクレーターを含む広い地域がユネスコの世界ジオパークに認定されました。この指定は、地域の自然の価値や地球の歴史的過程を示す重要な地点としての評価を受けた結果です。

生物圏保護区

ンゴロンゴロ保全地域は、セレンゲティ国立公園と併せて、150万頭のヌー、90万頭のトムソンガゼル、30万頭のシマウマを含む多様な野生動物の生息地です。また、ライオン、ヒョウ、チーターといった捕食者も多く、生物圏保護区として1981年に登録されました。

開発と地域の人々

18世紀に移住してきたマサイ族の人々がこの地域に居住し、現在約42,000人が牧畜を営んでいます。タンザニア政府は、ンゴロンゴロ地区を国立公園ではなく保全地域として管理し、住民の生業と環境保護の両立を図っています。さらに、地域内には幹線道路が南東から北西へと伸びています。

世界遺産登録

ンゴロンゴロ保全地域は、1979年に自然遺産として世界遺産に登録されました。しかし、1984年には危機遺産に指定され、それにもかかわらず2010年には複合遺産としてその価値が認められました。

登録基準

この地域は、以下の世界遺産登録基準を満たしています。

• - (4) 人類の歴史上重要な時代を示す建築様式や技術の集積。
• - (7) ひときわすぐれた自然美を持つ地域。
• - (8) 地球の歴史を示す重要な地質的特徴。
• - (9) 生態系の進化と発達を示す顕著な例。
• - (10) 生物多様性を有する重要な自然生息地。

以上の要素により、ンゴロンゴロ保全地域は、豊かな自然と人類の歴史の交差点として国際的な関心を集め続けています。

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