ヴァイオリン協奏曲第2番 (バルトーク)

バルトーク：ヴァイオリン協奏曲 第2番 Sz.112

ハンガリーの作曲家バルトーク・ベーラ（1881-1945）が、1937年8月から1938年12月31日にかけて作曲した傑作、《ヴァイオリン協奏曲 第2番 Sz.112》。この作品は、バルトークの生前においては彼の唯一のヴァイオリン協奏曲として広く認識されていました。しかし、作曲家の死後に初期の《ヴァイオリン協奏曲 第1番》が再発見されたことにより、本作には「第2番」という番号が付けられることになりました。彼の創造力が円熟期に達した頃の作品であり、その後の創作活動にも繋がる重要な位置を占めています。

演奏にはおよそ35分から39分を要します。

初演は、作曲が完了した翌年の1939年3月23日、オランダのアムステルダムで行われました。独奏ヴァイオリンをセーケイ・ゾルターンが担当し、ウィレム・メンゲルベルク指揮のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団によってその響きが初めて世に放たれました。

楽器編成

この協奏曲は、独奏ヴァイオリンと大規模なオーケストラのために書かれています。オーケストラは以下のような楽器で構成されます。

木管楽器: フルート2（うち1人はピッコロ持ち替え）、オーボエ2（うち1人はコーラングレ持ち替え）、A管クラリネット2（うち1人はバスクラリネット持ち替え）、ファゴット2（うち1人はコントラファゴット持ち替え）
金管楽器: ホルン4、トランペット2、トロンボーン3
打楽器: ティンパニ、小太鼓（スネアあり・なし各1）、大太鼓、シンバル（合わせ・サスペンディッド）、トライアングル、タムタム
その他: チェレスタ、ハープ
* 弦楽器: 弦五部（第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）

木管楽器の多様な持ち替え指示は、音色の変化に富んだ表現を可能にしています。

楽曲構成

この協奏曲は、伝統的な協奏曲の形式を踏襲し、以下の3つの楽章で構成されています。

第1楽章 Allegro non troppo

ソナタ形式によって書かれており、おおむねロ調（ロ短調）を基調としています。独奏ヴァイオリンによって提示される最初の主題は、ハンガリーの民俗舞踊ヴェルブンコシュにインスピレーションを得た五音音階的な響きを持っています。しかし、音楽が進むにつれて音の密度が増し、特に第2主題では12の半音すべてが含まれるなど、バルトーク特有の拡大された音語彙が現れます。楽章の終盤近くでは、独奏ヴァイオリンに四分音を用いたパッセージも登場し、その高度な技法と表現力を示しています。演奏時間はおよそ16分です。

第2楽章 Andante tranquillo

穏やかなテンポによる変奏曲形式の楽章です。ト調で書かれており、主題とそれに続く6つの巧みな変奏によって構成されています。それぞれの変奏は、主題の性格を保ちながらも、リズム、ハーモニー、楽器法などが多様に変化し、豊かな表情を見せます。演奏時間はおよそ11分です。

第3楽章 Allegro molto

ソナタ形式をとり、おおむねロ調に戻ります。民俗舞曲のような疾走感とエネルギーに満ちた楽章です。この楽章では、新しい主題に加え、第1楽章で提示された音楽的素材が効果的に再利用されています。これにより、第1楽章と第3楽章が呼応し合い、その間に抒情的な第2楽章が挟まれるという、バルトークが好んで用いたアーチ形式が形成されています。作品全体の構造的な統一性が高められています。演奏時間はおよそ12分です。

《ヴァイオリン協奏曲 第2番》は、バルトークの民族音楽研究に基づいた独特な音楽語法と、古典的な形式への深い理解が見事に融合した作品であり、ヴァイオリン協奏曲のレパートリーの中でも重要な位置を占める傑作とされています。

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