ヴァシーリイ・アルヒーポフ

ヴァシーリイ・アルヒーポフ：核戦争を回避した英雄

ヴァシーリイ・アルヒーポフは、1926年1月30日にモスクワ近郊の農家で生まれました。彼は太平洋高等海軍学校で教育を受けた後、1945年にソ連の対日参戦に従軍し、掃海艇に乗り込みました。1947年にはカスピ高等海軍学校を卒業し、その後黒海艦隊や北方艦隊、バルト艦隊で潜水艦隊に従事しました。

K-19とキューバ危機

アルヒーポフは、1961年7月4日に原子力潜水艦K-19の副艦長として、艦の冷却水漏れ事故に直面しました。この事故は、彼のキャリアにおいて重要なターニングポイントとなりました。

続いて1962年10月27日、キューバ危機が発生します。この危機の最中、アメリカ海軍がソ連のフォックストロット型潜水艦B-59を捕捉。B-59は核兵器を搭載しており、アルヒーポフは中佐として乗艦していました。アメリカの艦隊は、B-59の強制浮上を試みるために演習用爆雷を投下しました。このため、B-59の乗員は情報を遮断され、米ソ間の開戦がどうなっているのか把握できない状況に陥りました。

艦長のバレンティン・サビツスキーは、開戦を疑い核魚雷の発射を考えましたが、その発射には艦長、政治将校、そして副艦長の三人の全会一致の承認が必要でした。アルヒーポフはこの状況下で、発射を拒否する決断を下します。彼の主張は、K-19事故で示された彼の勇気と名声が根底にあり、結局艦長を説得し、モスクワからの指令を待つことにしました。

キューバ危機の影響

その後、B-59はバッテリー残量の乏しさから浮上し、米艦隊の中央に出て行くことになりました。この結果、核戦争の危機は回避され、多くの命が救われました。2002年の会議で当時の米国防長官ロバート・マクナマラは、まさにその時核戦争に非常に近づいていたことを認識していたと語っています。

経歴の晩年

その後もアルヒーポフはソ連海軍でのキャリアを積み、潜水艦戦隊司令として1975年には少将に昇進しました。さらに1981年には中将に昇進し、キーロフ海軍大学の学長を務めました。1980年代に退役し、ロシアのクパヴナに居を構えました。

彼は1998年8月19日に死去するまで、歴史に名を刻む英雄的存在として語り継がれました。彼の死と同じく、1961年のK-19事故における被曝が影響を与えたと考えられています。残念ながら、K-19の艦長ニコライ・ザテエフも彼の死から数日後の1998年8月28日に亡くなり、二人はともに72歳でした。

まとめ

ヴァシーリイ・アルヒーポフの決断は、冷戦時代における核戦争の危機を回避した重要な瞬間として歴史に名を残しています。彼の行動は、冷戦下の緊張した国際関係において、個人の勇気がどれほど大きな影響を与えることができるかを示しています。

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