フォックストロット型潜水艦

フォックストロット型潜水艦

フォックストロット型潜水艦は、ソ連/ロシア海軍で運用された通常動力型潜水艦です。NATOコードネームはフォックストロット型、ソ連海軍での計画名は641型潜水艦と呼ばれていました。

開発経緯

第二次世界大戦後、ソ連が初めて建造した611型潜水艦は、UボートXXI型を基にしており、早期の旧式化が懸念されていました。そこで、1950年代後半に611型の改良型として開発が開始されたのが641型潜水艦、すなわちフォックストロット型です。開発は611型と同じくルービン設計局が担当しました。

設計思想としては、前型の運用思想を継承し、遠距離通信能力、機雷敷設能力、対潜水艦戦闘を想定した偵察能力などが重視されました。その一方で、振動問題や船体形状の改善、潜航深度・水中行動力・居住性の向上が図られています。技術的な特徴としては、高出力の大型ソナーや水中聴音器を艦首部に装備し、水中聴音能力の向上を目指しました。

運用

1957年から建造が開始され、合計58隻が竣工しました。また、輸出用としても建造が行われ、20隻が竣工しています。ロシア海軍では2000年までに全艦が退役しましたが、一部の国では現在も運用されています。

艦体が大型化したことで洋上運用に適した艦となりましたが、居住性や兵器管制装置・センサー類には改善の余地がありました。そのため、改良型として641B型潜水艦が1971年から建造されることになります。

キューバ危機とフォックストロット型

1962年10月27日のキューバ危機の際、キューバへ向かっていた貨物船を護衛していたフォックストロット型潜水艦「B-59」では、アメリカ海軍の爆雷攻撃に対し、核魚雷を発射するか否かで艦内が紛糾しました。最終的には、副艦長ヴァシーリイ・アルヒーポフの反対により発射は中止されました。アルヒーポフは、原子力潜水艦「K-19」の原子炉冷却水漏れ事故を収拾した人物としても知られています。この一件は、世界が核戦争に最も近づいた瞬間の一つとして語られています。

運用国

ソビエト連邦海軍
インド海軍: 1967年から1974年に8隻を購入し、カルヴァリ級として運用。2010年までに全艦退役。一部は博物館で展示。
リビア海軍: 1978年から1982年に6隻を購入。2隻が現役だが、1984年以降は潜航せずに運用。
キューバ海軍: 1978年から1983年に6隻を購入。全艦退役。
ポーランド海軍: 1987年から1988年にソ連海軍から中古艦2隻を取得（「ヴィルク」「ヂク」）。2003年に全艦退役。
ウクライナ海軍: 1997年にロシア海軍からB-435を購入し、「ザポリージャ」と改名。長らく運用されず、修理を繰り返した後、外国への売却が計画されました。しかし、クリミア危機でロシア軍に接収され、ロシア海軍に編入。

同型艦

ロシア国外

B-49: 退役後、イギリスで観光施設「U-475 ブラックウィドウ」として公開。閉鎖後、メドウェイ川に停泊。
B-413: カリーニングラードで記念艦として展示。
B-427: アメリカ合衆国カリフォルニア州ロングビーチで観光施設「B-427 スコーピオン」として展示されていたが、老朽化により閉鎖。現在は遺棄された状態。
B-440: ヴォログダ州ヴィテグラのヴォルガ・バルト水路で記念艦として展示。
クルスラ: ヴィシャーカパトナムで記念艦として展示。
B-107 (B-807): 船室部分がサンクトペテルブルクのロシア潜水艦博物館で展示。
「ヂク」: セイル部分がグディニャ海軍博物館で展示。
「カルヴァリ」「カンデリ」: セイル部分のみ保存。

登場作品

『シークエスト』：環境テロリストが使用。
『スターゲイトSG-1』
『バミューダ・トライアングル』：バミューダ海域の調査船として登場。
『メイポート沖の待ち伏せ』：P.T. デューターマン作の小説。

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