ヴァルトガイスト

ヴァルトガイスト：類まれな才能と栄光に満ちた競走生活

イギリスで生まれたヴァルトガイストは、フランスの名門アンドレ・ファーブル厩舎の指導の下、類まれな才能を開花させました。牡馬としては小柄な体格ながら、その強靭な精神力と卓越した能力で、数々のG1レースを制覇。2016年のクリテリウムドサンクルーでのG1初勝利を皮切りに、2018年にはサンクルー大賞、2019年にはガネー賞と、主要レースを次々と制しました。

2017年はダービーで2着と健闘するも、勝利には届かず。しかし、翌2018年はエドゥヴィユ賞、シャンティイ大賞と連勝、勢いそのままにサンクルー大賞でも栄冠を掴みました。秋にはフォワ賞を圧勝し4連勝。凱旋門賞ではエネイブルに次ぐ2番人気に支持されながらも4着と惜しくも敗れましたが、その実力は折り紙付きでした。その後も香港ヴァーズなど海外遠征も経験しました。

2019年はガネー賞で圧勝し3度目のG1制覇。さらにプリンスオブウェールズステークス、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスでも3着と好走しました。そして再びフォワ賞を制し、凱旋門賞へ挑みます。

前評判では、速い馬場を得意とするヴァルトガイストは、その年の凱旋門賞三連覇を狙うエネイブルの最大のライバルと目されていました。しかし、当日は重馬場。エネイブル陣営も雨天を懸念していましたが、ヴァルトガイストはそんな悪条件を物ともせず、エネイブルをゴール前で差し切り、見事優勝。JRAや現地での人気を覆す大金星となりました。この勝利は、フォワ賞勝ち馬としては1984年以来、5歳以上の馬としては2002年以来の快挙でした。この凱旋門賞を最後に、ヴァルトガイストは現役を引退しました。

ヴァルトガイストの血統：ドイツの名門牝系

ヴァルトガイストの血統は、その競走成績と同じくらい輝かしいものです。母Waldlercheは仏G3ペネロープ賞の勝ち馬、半妹Waldliedは仏G2マルレ賞の勝ち馬と、近親にも活躍馬が多く存在します。さらに、母の半兄には英セントレジャー勝ち馬のマスクドマーヴェル、祖母の半弟には独ダービー勝ち馬のWaldparkがいます。

遡ること11代母Wallyから、本馬に至るまで、牝系の祖先が全てイニシャルがWの馬で構成されているという、非常に珍しいドイツ牝系に属しています。馬名自体もドイツ語で「森の精」を意味する言葉で、その血統と名前から、森の精霊のような神秘的な魅力を感じさせます。

特に注目すべきは、9代母にあたるWaldrunです。この繁殖牝馬は、Wildbahn（独オークス）、Windfang（バーデン大賞）、Wilderer（独ダービー）、Waidmann（独2000ギニー）、Waidmannsheil（アラルポカル）と、5頭もの大競走優勝馬を輩出した名牝です。その孫世代にも活躍馬がおり、Waldrunの血がいかに強力であるかが分かります。

種牡馬としてのヴァルトガイスト

華々しい現役生活を終えたヴァルトガイストは、2020年からアイルランドのバリーリンチスタッドで種牡馬となりました。そして、2025年にはドイツのゲシュティート・ルンツェンに移籍し、種牡馬生活を続けています。

ヴァルトガイストの遺伝子が、将来、新たな名馬を生み出すことを期待したいところです。その偉大な血統と類まれな才能を受け継いだサラブレッドが、世界の競馬界で活躍する日が来るかもしれません。

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