ヴァルドサウルス

ヴァルドサウルスの概要

ヴァルドサウルス（Valdosaurus）は、「ウィールドのトカゲ」という意味をもち、白亜紀前期に生存していた草食性の二足歩行恐竜の一種です。この恐竜は、イギリスのワイト島を中心に化石が発見されています。

発見と命名の歴史

19世紀、ウィリアム・ダーウィン・フォックスがワイト島のカウリーズチャインで小さな大腿骨を発見しました。これがヴァルドサウルスの初めての化石とされています。しかし、その後、フォックスはこの化石が1848年にギデオン・マンテルによって採取されたイグアノドンの化石であると誤認し、この誤解は1869年に新しい属名ヒプシロフォドンの命名にまで繋がります。このヒプシロフォドンの大腿骨と、フォックスの大腿骨は無関係であったのですが、いずれも大英自然史博物館に収蔵されました。

1975年、ピーター・ガルトンはこれを新たな種として命名し、Dryosaurus canaliculatusとしました。種小名の「canaliculatus」は、「小さな溝を持つ」という意味で、大腿骨の特長を表しています。1977年にはこの種に新しい属名としてValdosaurusが与えられました。この名前は、発見地の地名ウィールド層群に由来しています。タイプ種はD. canaliculatusからV. canaliculatusへと変更されました。

また、1982年には新たに発見されたもう一つの種V. nigeriensisが記載されましたが、後にこの種は独自の属エルラゾサウルスとされました。1988年にはウィリアム・ブロウズが別の種Valdosaurus dextrapodaを命名したものの、これは誤りとされ支持されていません。

分布と化石の詳細

ヴァルドサウルスは主にイギリスのワイト島や南部のウェセックス累層、ヘイスティング層などで多くの化石が発見されました。また、ルーマニアやスペインでも生息していたことが示唆されています。これらの層はベリアス期からバーレム期（約1億4500万年前から1億2500万年前）に該当します。

初見のV. canaliculatusは、主に大腿骨の化石で知られていましたが、後には部分的な骨格と歯の化石も追加されました。とはいえ、2009年にガルトンによる再評価が行われ、イングランド以外での化石はヴァルドサウルスとして認定するのが難しいと判断されました。その結果、V. nigeriensisはエルラゾサウルスに分類されることになりました。

化石の中には大腿骨や脊椎骨、骨盤などの重要な標本が含まれ、特に上部ウィールデンクレイ累層の化石はV. canaliculatusとの関係が指摘されています。ガルトンは、1842年にオーウェンによってイグアノドンの化石として記載されたものが、実際には初めてのヴァルドサウルスの大腿骨であると証明しました。この大腿骨は非常に小さく、長さは約14cm程で、成体の推定体長は1.2m、体重は10kg程度と考えられています。つまり、本来は中大型の鳥脚類であった可能性があります。

分類と関連情報

ガルトンは、ヴァルドサウルスを当初ヒプシロフォドン科に分類しましたが、現在ではこの分類群は広く放棄されており、一般的にはドリオサウルス科に属すると考えられています。

このように、ヴァルドサウルスは興味深い歴史を持ちながら、その化石の詳細や進化的な位置については未だ多くの議論があります。今後の研究によってさらにその全容が明らかになっていくことが期待されています。

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