ヴァル・ド・グラース教会の天井画を称える詩

『ヴァル・ド・グラース教会の天井画を称える詩』（仏語原題： La Gloire du Val-de-Grâce ）は、1668年に劇作家モリエールによって創作された詩作品です。この詩は、モリエールの親しい友人でもあった画家ピエール・ミニャールが手がけたヴァル・ド・グラース教会の壮麗な天井画を主題としています。

詩で称賛の対象となっているヴァル・ド・グラース教会は、フランス国王ルイ14世の母であるアンヌ・ドートリッシュが、1638年のルイ14世の懐妊と無事の出産に対する感謝の念を込めて、聖母マリアに捧げるために建立を発願したものです。教会の建設は1645年に開始されましたが、工事は計画通りに進まず、その完成を見るのは1667年になってからでした。

ミニャールが教会の天井部分にフレスコ画の制作を依頼されたのは、教会建設中の1661年のことです。彼は依頼を受けてから制作を進め、教会の完成と時を同じくして、その天井画が一般に公開されました。

天井画が公開された頃、画家ミニャールはパリの芸術界の中心であった王立絵画彫刻アカデミーへの加入を、宰相ジャン＝バティスト・コルベールや文学者シャルル・ペローといった有力者たちから繰り返し強く勧められていました。しかし、ミニャールはアカデミーからの度重なる働きかけに応じることなく、ついには加入を拒否します。

ミニャールのこのアカデミー非加入の姿勢は、特にペローとの間に軋轢を生み、彼はペローから厳しい批判や制裁を受けることになりました。親友であったモリエールは、アカデミー体制に反発し、困難な状況に置かれていたミニャールを公に支持し、擁護しようと試みます。その目的を果たす手段として、モリエールがミニャールの傑作であるヴァル・ド・グラース教会の天井画を高く評価し、その芸術性を讃える詩を制作したのです。

この詩は1669年に出版されましたが、それに先立つ1668年12月には、文学や芸術の集まるサロンにおいて朗読されていたと伝えられています。モリエールは詩を通して、友の才能を称え、その立場を支持する明確なメッセージを発信しました。

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