ヴィクトリアス (空母)

イギリス海軍航空母艦「ヴィクトリアス」：激動の時代を生き抜いた艦艇

「ヴィクトリアス (HMS Victorious, R38)」は、イギリス海軍が誇るイラストリアス級航空母艦の2番艦です。その艦名は「勝利した」を意味する形容詞であり、イギリス海軍においては4代目にあたります。1941年3月末に竣工したヴィクトリアスは、第二次世界大戦において数々の重要な作戦に参加し、その艦歴はまさに激動の時代を象徴するものです。

ビスマルク追撃戦

ヴィクトリアスにとって最初の大きな任務は、1941年5月のドイツ戦艦「ビスマルク」追撃作戦への参加でした。この作戦において、ヴィクトリアスから発進したソードフィッシュ雷撃機9機がビスマルクに魚雷攻撃を行い、1本を命中させるという戦果を挙げました。この攻撃によってビスマルクの航行能力が低下し、最終的な撃沈に貢献したと言えるでしょう。

ビスマルク追撃戦では、ヴィクトリアスは荒天の中、ソードフィッシュ雷撃機を投入し、敵艦に雷撃を試みました。この状況下での攻撃は非常に困難を極めましたが、雷撃隊は勇敢に任務を遂行し、一発の魚雷を命中させました。とはいえ、ビスマルクの損害は軽微であり、その後の撃沈には複数の要因が絡んでいたことを留意すべきです。この攻撃は、ソードフィッシュという当時としては老朽化した機体が、まだ戦える事を証明する出来事でした。この功績は、後の太平洋での活躍へと繋がる重要な一歩となるのです。

太平洋での戦い

1942年末、太平洋戦線で激戦を繰り広げていたアメリカ海軍は、艦隊型空母の不足に悩まされていました。この状況を受け、ヴィクトリアスはアメリカ海軍に貸与され、1943年初頭から太平洋戦線に投入されました。アメリカ海軍では「USSロビン」のコールサインで運用され、ソロモン諸島での戦闘に参加するなど、その存在感は大きかったと言えるでしょう。しかし、エセックス級やインディペンデンス級といった新型空母の配備が進んだことで、ヴィクトリアスは再び大西洋に戻ることとなりました。太平洋における活躍は、アメリカ海軍の戦力不足を補う貴重な貢献でした。

ティルピッツ攻撃

1944年4月、ヴィクトリアスはノルウェーのアルタフィヨルドに潜むドイツ戦艦「ティルピッツ」攻撃作戦「タングステン作戦」に参加しました。この作戦では、バラクーダ艦上攻撃機がティルピッツに爆撃を行い、一定の損傷を与えました。しかし、天候不順や様々な要因により、ティルピッツを撃沈するには至りませんでした。ティルピッツ攻撃は、連合国軍の執拗な攻撃を象徴する出来事であり、ヴィクトリアスはその最前線にいたのです。

沖縄戦と本土空襲

第二次世界大戦末期には、ヴィクトリアスはイギリス太平洋艦隊に所属し、沖縄戦に参加しました。この戦いで特攻機の攻撃を受け、14名の戦死者を出しましたが、沈没は免れました。厚い装甲が、まさにこの危機を救ったのです。その後、日本本土への空襲にも参加し、呉軍港空襲などを行いました。

戦後と近代化改修

戦後、ヴィクトリアスは近代化改修を受け、蒸気カタパルトやアングルド・デッキなどを装備することでジェット機運用能力を獲得しました。これはイラストリアス級の中でヴィクトリアスのみが行った大規模な改修であり、その技術革新は後の空母開発にも大きな影響を与えました。しかし、この近代化改修は容易なものではなく、設計変更を繰り返すなど、多大な時間と費用を費やしました。

近代化改修後もヴィクトリアスは様々な任務に従事し、イギリス海軍の主力として活躍を続けました。クウェートへの海兵隊派遣作戦「ヴァンテージ作戦」への参加、インドネシアとの対立における偵察や地上支援、そしてアメリカ海軍との共同演習など、多岐に渡る活動は、その能力の高さを示しています。しかし、防衛費削減や人員不足などの問題から、1968年に退役。その後、スクラップとして解体されました。

搭載機

ヴィクトリアスの艦載機は時代と共に変化しました。初期にはソードフィッシュやアルバコアといった艦上攻撃機、フルマー戦闘機が中心でしたが、戦後にはシービクセン、バッカニアといったジェット機、そしてガネット早期警戒機やウェセックスヘリコプターなど、多様な機種を搭載していました。

結語

ヴィクトリアスは、第二次世界大戦から戦後まで、イギリス海軍における重要な役割を果たしました。ビスマルク追撃、ティルピッツ攻撃、太平洋でのアメリカ海軍との協力、そして近代化改修によるジェット機運用など、その艦歴はまさに激動の時代を象徴するものです。その活躍は、イギリス海軍史においても重要な位置を占めており、後世に語り継がれるべき偉大な艦艇と言えるでしょう。

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