ヴィスコンティ・スフォルツァ版タロット

ヴィスコンティ・スフォルツァ版タロット：現存する最古のタロットの魅力

ヴィスコンティ・スフォルツァ版タロットは、15世紀後半にミラノ公のフランチェスコ・スフォルツァなどが、当時の画家たちに制作を依頼したタロットカードの総称です。現存する最古のタロットとして知られ、様々な博物館や図書館、個人のコレクションに分散して保管されている、約15のデッキを指します。現在、標準的なタロットとして知られるマルセイユ版とは、絵柄に大きな違いが見られるのが特徴です。

また、ヴィスコンティ・スフォルツァ版タロットには、「悪魔」や「塔」のカードが欠落しているものが存在します。これらのカードが最初から存在しなかったのか、あるいは時の流れの中で失われたのかについては、研究者の間でも意見が分かれています。完全なデッキは現存していませんが、コレクションによっては、同一のカードで構成された絵札がまとまって残されているものもあります。

ここでは、特に有名な3つのコレクションについて、詳しく見ていきましょう。

1. キャリー・イェール版 (Cary-Yale)

キャリー・イェール版は、1967年にイェール大学図書館に寄贈された、キャリー家のカードゲームコレクションに由来します。ヴィスコンティ・ディ・モドローネ版とも呼ばれ、少なくとも1466年まで遡るとされています。フィリッポ・マリア・ヴィスコンティの注文によって制作されたという説もあり、このデッキが最も古い可能性も指摘されています。学者ジョルダーノ・ベルティによれば、1442年から1447年の間に製作されたと考えられています。

このデッキの特徴は、通常の大アルカナに加えて、「信仰」「希望」「慈善」の3枚のカードが含まれている点です（これらのカードはそれぞれ「教皇」「星」「女教皇」の代わりとして使用されたという説もあります）。また、人物札には、通常の「王」「女王」「騎士」「ペイジ」に加えて、「女騎士」と「メイド」が存在します。制作時には86枚で構成されていたと考えられており、現在は大アルカナ11枚、人物札17枚、金貨の3を除いた数札39枚、合計67枚が現存しています。カードのサイズは189 × 90 mmで、大アルカナと人物札の背景は金箔で、数札の背景は銀で装飾されています。

2. ブレラ・ブランビラ版 (Brera-Brambilla)

ブレラ・ブランビラ版は、1909年にヴェネツィアでこのデッキを入手したジョヴァンニ・ブランビラにちなんで名付けられました。1971年には、ミラノのブレラ美術館の目録に登録されています。

このデッキは、1463年にフランチェスコ・スフォルツァの依頼により、ボニファチオ・ベンボによって描かれました。現在、48枚が現存しており、そのうち大アルカナは「皇帝」と「運命の輪」の2枚のみです。カードのサイズは180 × 90 mmで、大アルカナと人物札の背景は金箔、数札の背景は銀で装飾されています。金貨の4を除く全数札と、杯の騎士とペイジ、金貨の騎士とペイジ、棒の女王と騎士とペイジが現存しています。

3. ピアポント・モルガン・ベルガモ版 (Pierpont-Morgan-Bergamo)

ピアポント・モルガン・ベルガモ版は、コッレオーニ・バリオーニ版、またはフランチェスコ・スフォルツァ版とも呼ばれます。1451年頃に制作されたと考えられており、もともとは78枚で構成されていたと考えられています。現在では、大アルカナ20枚、人物札15枚、数札39枚、合計74枚が残っています。

このデッキのうち35枚はモルガン・ライブラリーが、26枚はアッカデミア・カッラーラ美術館が所蔵しています。残りの13枚は、ベルガモ地方のコッレオーニ家が個人所蔵しています。大アルカナの「悪魔」と「塔」のカードが欠落しており、大アルカナと人物札の背景には金箔が使用されています。数札の背景はクリーム色をベースに、花と蔓をモチーフにした装飾が施され、全てのカードに青い縁取りが施されています。カードのサイズは173 × 87 mmです。

ヴィスコンティ・スフォルツァ版タロットは、その美しい絵柄と歴史的価値から、多くの人々を魅了し続けています。現存するカードは少ないながらも、当時の文化や芸術を垣間見ることができる貴重な資料として、大切に保存されています。

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