ヴィレッジ・ストンパーズ

ヴィレッジ・ストンパーズ（The Village Stompers）は、1960年代中頃に一世を風靡したアメリカ合衆国の音楽グループです。特に1963年に発表した楽曲「ワシントン広場の夜はふけて（Washington Square）」の世界的ヒットによって広くその名を知られるようになりました。彼らの音楽スタイルは、伝統的なディキシーランド・ジャズを基盤としながらも、バンジョーを積極的にフィーチャーし、さらにスキャット、ハミング、ヴォーカリーズといった歌唱法を演奏に取り入れるという独自のアプローチが特徴でした。当時の音楽シーンで人気を博していたフォークソングの要素も巧みに融合させていたことから、「フォーク・ディキシー」とも称され、従来のジャズとは一線を画す個性的なサウンドを確立しました。

バンド名の由来と背景

バンド名の「ヴィレッジ・ストンパーズ」は、ニューヨーク市マンハッタンにあるグリニッジ・ヴィレッジに由来しています。この地は、古くから芸術家や音楽家が多く集まる文化的な中心地であり、彼らのサウンドのインスピレーション源となったと考えられます。彼らの代表曲のタイトルにもなっている「ワシントン広場」は、かつて19世紀にグリニッジ・ヴィレッジの地域がそう呼ばれていたことに由来しており、バンドのルーツや音楽性がこの地区と深く結びついていることを示唆しています。

「ワシントン広場の夜はふけて」の世界的成功

1963年、ヴィレッジ・ストンパーズはエピック・レコードからシングル「ワシントン広場の夜はふけて / ウィーンの夜はふけて（Washington Square / Turkish Delight）」をリリースします。このシングルは、リリースされるやいなや大きな反響を呼び、特にA面の「ワシントン広場の夜はふけて」は同年9月にはアメリカの音楽業界誌『ビルボード』が発表する総合シングルチャート「Billboard Hot 100」で最高位第2位を記録するという快挙を達成しました。さらに同年10月には、遠く離れたオーストラリアの主要ヒットチャートでも首位を獲得するなど、文字通り世界的な成功を収めました。なお、このシングルのB面として収録された「ウィーンの夜はふけて」は、モーツァルトのピアノソナタ第11番イ長調 K. 331の第三楽章「トルコ行進曲」を原曲としたものでしたが、当時発売されたLPアルバムには収録されませんでした。

日本においても、「ワシントン広場の夜はふけて」は大きな人気を博し、1964年には日本の人気バンド、ダニー飯田とパラダイスキングがこの曲をレパートリーに取り入れるなど、国内の音楽シーンにも影響を与えました。

その後のキャリアとチャートの推移

「ワシントン広場の夜はふけて」の大ヒットに続き、ヴィレッジ・ストンパーズは新たな楽曲をリリースしますが、以前ほどの大きな成功を収めることは困難でした。1964年4月には、シングル「ロシアより愛をこめて（From Russia With Love / The Bridge Of Budapest in April）」がBillboard Hot 100で第81位にランクインしました。また、同年12月には「屋根の上のヴァイオリン弾き（Fiddler On The Roof / Moonlight On The Ganges）」が同じくBillboard Hot 100で第97位と、かろうじてチャートインを果たしました。しかしながら、これ以降、彼らのシングルが再びBillboard Hot 100に登場することはなく、主要チャートからは徐々に遠ざかっていきました。

「グリーングリーン」や「モスクワの夜はふけて」なども彼らの演奏した楽曲として知られています。

ディスコグラフィ

ヴィレッジ・ストンパーズは、彼らのキャリアの中で複数のアルバムをリリースしました。代表的なものとしては、彼らの最大のヒット曲を冠した『ワシントン広場の夜はふけて』（Washington Square, 1963年）を始め、『More Sounds of Washington Square』（1964年）、『Around the World with the Village Stompers』（1964年）、『Some Folk, a Bit of Country and a Whole Lot of Dixie』（1965年）、『New Beat on Broadway』（1965年）、『蜜の味』（Taste of Honey and Other Goodies, 1966年）、『Live at the Copa』（1967年）、『One More Time』（1967年）、そして『Greatest Hits』（1967年）などがあります。

ヴィレッジ・ストンパーズは、短期間ではありましたが、独自の音楽スタイルと「ワシントン広場の夜はふけて」の世界的ヒットによって、1960年代の音楽シーンに確かな足跡を残しました。彼らのサウンドは、ディキシーランド・ジャズの伝統を現代的にアップデートし、フォークソングの要素を取り入れることで、当時のリスナーに新鮮な響きを提供しました。

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