ヴィーナスとキューピッド (ロット)

『ヴィーナスとキューピッド』

ロレンツォ・ロットが1530年ごろに描いた「ヴィーナスとキューピッド」は、ニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵されている作品で、オイルペイントが施されたキャンバスに描かれています。この作品は、1918年に公開されて以来、絵画の来歴は謎のままとなっています。当時、サロモン・レナックが出版した「中世およびルネッサンス絵画目録」でこの作品を紹介し、一躍注目を浴びました。そうした後、この絵画は1986年にメトロポリタン美術館に収蔵されることとなります。

作品の背景と象徴性

この作品には、結婚や性的なテーマに由来する複数の象徴が描かれています。従って、制作される過程で、結婚の記念や祝福の意図が込められた可能性が高いです。作中には、結婚を象徴するマートルのガーランドや女性性を象徴する貝殻、バラの花びらなど、さまざまな寓意が盛り込まれており、観る者に深い意味を伝えます。

ヴィーナスは、布の上に横たわり、裸体の姿で描かれています。彼女の横には、愛の神キューピッドが立っており、シーン全体に甘美な雰囲気を漂わせています。背景には、絡みつくツタの木にかけられた赤いカーテンがあり、このツタは永遠の愛の象徴となっています。

ヴィーナスの姿と表情

ヴィーナスの髪型やティアラ、ベールは、まさに花嫁を連想させるデザインです。また、彼女が身に着けている真珠のペンダントは純潔を表しています。しかし、特に注目すべきは、キューピッドの奇妙な行動です。彼は、ヴィーナスが持つガーランドの中に小便を放ち、これがあからさまに性的な豊穣を示唆しています。この動作は、古典的な「プエル・ミンゲンス」という芸術のテーマに由来するものです。

ヴィーナスの姿勢は、ジョルジョーネの名作「眠れるヴィーナス」とも比較されますが、本作のヴィーナスは目を覚ました状態で、観る者に対して正面から視線を向けています。彼女の右手で持つガーランドの下には香炉がつるされ、描かれた布の前には棒やヘビが象徴的に描かれています。これらの要素からは、結婚を祝福しつつも、潜む危険に対する注意も促しているように思われます。

まとめ

『ヴィーナスとキューピッド』は、ロレンツォ・ロットによる作品の中でも特に象徴的で、多面的な解釈を可能にする一枚です。結婚や豊穣をテーマにしたその表現は、ルネッサンス期の美術における重要な位置を占めており、観る者に対してさまざまな感情や思索を呼び起こします。美術を通じて感じることのできる人間の感情や関係性は、この作品の持つ魅力の根幹にあると言えるでしょう。

参考文献

• - Carlo Pirovano, Lotto, Electa, Milano 2002.
• - Roberta D'Adda, Lotto, Skira, Milano 2004.
• - Alessandra Fregolent, Giorgione, Electa, Milano 2001.
• - Salomon Reinach, Répertoire des peintures du Moyen Âge et de la Renaissance. Paris: Leroux, 1918.

外部リンク

• - Venus and Cupid - Metropolitan Museum of Art - 2017年6月2日閲覧

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