ヴェガ号

ヴェガ号の航海とその歴史的意義

ヴェガ号（S/S Vega）は、スウェーデンの科学者アドルフ・エリク・ノルデンショルドが1878年から1880年にかけて提督として乗船した蒸気船です。この船は北極海航路、いわゆる北東航路を制覇するという、当時の科学や航海術がもたらした大きな挑戦を成功させました。これは、大航海時代以来初めての快挙であり、特に歴史的な意義を持っています。

船の建造と船員構成

ヴェガ号は、1872年にドイツのブレーマーハーフェンで特注の捕鯨船として建造され、総トン数は357トン、乗員数は30名でした。航海士ではないノルデンショルドが提督を務める中、熟練した航海士ルイス・パランデルが船長となり、実際の航海運行を担当しました。ノルデンショルドは航海の準備と計画を緻密に進め、航行中も全てが計画通りに進行したとされています。ただし、一度だけ流氷に囲まれたベーリング海上での不測の事態がありましたが、この困難を乗り越えたのは船長の優れた航海技術によるものです。

航海の背景と目的

ノルデンショルドの航海は、単に探検のためだけではなく、スウェーデンの国益を考慮した国家的戦略に基づいて実施されました。この冒険にはスウェーデン国王オスカル2世の承認が必要であり、さらにはスウェーデンやロシアの豪商からの支援も得ています。特にロシアにとっては、シベリア以北の北極海の航路発見が国の発展に寄与するため、航海を歓迎していました。

航海の経過

ヴェガ号は1878年6月22日にストックホルムを出発し、翌月4日に正式に航行を開始しました。ノルデンショルドは航路計算を行い、シベリア沿岸部を通ることで無事に北極海を通過することに成功しました。この航海は従来の帆船による挑戦が失敗に終わっていたため、特に注目されました。

しかし、9月28日には流氷に閉じ込められてしまい、越冬することに決定。翌年1879年7月18日には氷を抜け出し、9月2日に横浜港に到着しました。その後の日本での滞在中、ノルデンショルドは多くの書籍を購入し、長崎港からは東南アジア、インド洋を経由してスエズ運河を通り、1880年4月24日にスウェーデンへ帰国しました。特筆すべきは、この航海の間に乗員に死亡者や壊血病が出なかったことです。

航海記の出版とその後の運命

ノルデンショルドは1881年に「アジアとヨーロッパを巡るヴェガ号の航海」という題の航海記を発表し、この航海の詳細を記録しました。北東航路が発見された後、ヴェガ号は捕鯨やアザラシ猟に利用されましたが、1903年にはグリーンランド西部のメルヴィル湾で沈没してしまいました。現在、ストックホルムの国立自然歴史博物館でこの航海を記念する碑が建立されています。

まとめ

ヴェガ号の航海は、科学的探検や航海術の発展において重要な一歩を意味します。それだけでなく、国際的な協力の成果とも言えるこの歴史的な冒険は、今なお多くの人々に語り継がれています。

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