ヴェッソブルン

ヴェッソブルンは、ドイツ南部に位置するバイエルン州オーバーバイエルン行政管区、ヴァイルハイム＝ショーンガウ郡に属する町です。この地は、古高ドイツ語によるキリスト教関連の重要な史料である「ヴェッソブルンの祈り」が発見された場所であり、またバロック時代の華麗な化粧漆喰装飾で名を馳せたヴェッソブルン派の職人たちの故郷としても広く知られています。

地理

アンマー湖の南西、ヴァイルハイム・イン・オーバーバイエルンの北西、そしてランツベルク・アム・レヒの南東という位置にあり、海抜701メートルの高所に広がっています。町は公式には51の小さな地区や集落から構成されており、中でもハイト、パーターツェル、ザンクト・レオンハルト・イム・フォルスト、シュリッテン、テンプルホーフ、ヴェッソブルン、ツェルゼーといった集落が含まれます。パーターツェル地区は、多孔質の石灰岩であるテュファの採石場やウルリヒの泉、そしてドイツ国内最大規模を誇るイチイの群生地「パーターツェル・アイベンヴァルト」があることで特筆されます。

歴史

町の歴史は、その名の由来ともなったヴェッソブルン修道院の創建に深く根ざしています。伝説によれば、8世紀半ばにバイエルン公タッシロ3世が狩りの途中にこの地で見た夢のお告げに従い、泉のほとりに修道院を建てたのが始まりとされています。

修道院の変遷

実際の修道院は、おそらく8世紀後半に貴族によって創建されたと考えられています。初期のベネディクト会修道士たちは、周辺の森を開墾し、今日のヴェッソブルンの基礎となる耕地を広げました。「ヴェッソブルン」という名は、「ヴェッツォの泉」を意味する開墾地の名が、やがて修道院名に転じたものです。

788年には帝国修道院となりますが、当時はまだ貧しく、軍役の代わりに祈祷を捧げることで義務を免除されるほどでした。900年頃にアウクスブルク司教領となりますが、955年にハンガリー軍の襲撃により修道院は破壊され、多くの修道士が犠牲となり一度消滅します。

その後、レヒフェルトの戦いでハンガリー軍が敗退すると、この地での宗教活動は司教座聖堂参事会修道院として再開されますが、この時期の詳細はあまり伝わっていません。1064年になって再びベネディクト修道院として再興され、繁栄を迎えました。11世紀末から12世紀にかけては、修道院と関係の深い女性隠修士ディアムートが多数の書物を書写しています。1141年には司教の支配から独立し、領主の直轄地となります。1220年の火災後には大規模な改築が行われ、芸術保護も盛んに行われるようになりました。

世俗化と再建

1803年の世俗化により修道院は廃止され、多くの建物が解体されてしまいます。特に修道院教会は老朽化のため取り壊されました。しかし、1861年に歴史家ヨハン・ネポムク・ゼップが敷地の一部を購入し、建物の保存に尽力しました。そして1913年、男爵の寄贈を受けたベネディクト会修道士たちによって、かつての翼廊部分を利用する形で新たな修道院が再建され、現在に至ります。

ガイスポイント

かつて「ヴェッソブルン」は修道院を指し、その近隣の村は「ガイスポイント」と呼ばれていました。この村は遅くとも12世紀初頭には形成されていたと見られ、「ヤギの飼育場」を意味する耕牧地の名に由来します。1853年になり、ガイスポイントとハイトの村は「ヴェッソブルン」を正式名称とする許可を得ました。

文化と見所

ヴェッソブルンには、豊かな歴史と文化に触れることができる多くの見所があります。

ヴェッソブルンの祈り: 814年頃に古高ドイツ語で記されたこの詩篇は、初期のキリスト教思想やゲルマン的多神教の宇宙観が交錯する貴重な史料です。発見されたこの地名にちなんで名付けられました。
ヴェッソブルン修道院跡: 17世紀から18世紀にかけて建設された壮麗な伽藍の跡が残ります。特に、ヴェッソブルン派の職人ヨハン・シュムーツァーによる化粧漆喰装飾が見事なフュルステントラクト（領主の間）や階段室は必見です。
旧聖ペテロ修道院教会跡: 13世紀頃に建てられたロマネスク様式の教会の名残として、空の鐘楼が残されています。「グラウエ・ヘルツォーク（灰色の公爵）」や「レーマートゥルム（ローマ塔）」と呼ばれ、後期ロマネスク様式の一部が露出しています。
洗礼者聖ヨハネ教区教会: 1757年にバロック様式で再建されました。教会内には、洗礼者聖ヨハネの生涯を描いたレリーフや、フランツ・クサヴァー・シュメットルの傑作とされる主祭壇の像などがあります。また、13世紀半ばの木製キリスト十字架像も保存されており、信仰を集めています。
泉とタッシロのボダイジュ: 17世紀に建てられた井戸小屋を持つ3つの泉と、樹齢約1000年とされる自然文化財「タッシロのボダイジュ」は、創設伝説に結びつく重要な場所です。
クロイツベルク礼拝堂: 955年にハンガリー軍によって殉教した修道士を追悼するために建てられた十字架が起源です。現在の石造りの礼拝堂は16世紀末に建てられ、18世紀にはマテウス・ギュンターのフレスコやタッシロ・ツェプフの化粧漆喰による改築が施されました。礼拝堂の周囲には、殉教者を偲ぶ「フンネンシュタイン」と呼ばれる石が置かれています。

ゆかりの人物

ヴェッソブルンは、著名な作家ルイーゼ・リンザー（1911年 - 2002年）が幼少期を過ごした地でもあります。彼女の小説『ガラスの指輪』には、この地での経験が描かれており、彼女自身もこの地に埋葬されています。

ヴェッソブルンは、古代の祈り、中世の修道院生活、バロック芸術の輝き、そして現代の文化が重なり合う、歴史と自然の魅力に満ちた町です。

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