ヴェネツィアの獅子

ヴェネツィアの獅子、それは翼を持つライオンの姿で、この都市の象徴として世界に知られています。その起源は9世紀に遡り、ヴェネツィアの商人がアレクサンドリアから聖マルコの聖遺物を持ち帰ったことに始まります。この出来事以来、聖マルコはヴェネツィアの守護聖人とされ、彼を象徴する有翼の獅子もまた、ヴェネツィアのシンボルとなりました。

12世紀頃、サン・マルコ広場に立つ円柱の上に、聖マルコを表す有翼の獅子像が設置されました。以後、ヴェネツィアの獅子といえば、この像を指すことが一般的となりました。

サン・マルコ広場の獅子像

サン・マルコ広場には、聖マルコと聖テオドーロの二本の円柱が立っています。そのうち、東側の円柱の上に設置されたのが、有翼の獅子像です。この像は、セバスティアーノ・ツィアニがドージェ（ヴェネツィア共和国の元首）を務めていた1172年から1177年の間、あるいは1268年に設置されたと考えられています。興味深いことに、この有翼の獅子像は、紀元前300年頃にキリキア地方のタルススで作られた神像が起源だとされています。長い年月を経て、ヴェネツィアに運ばれたこの像は、守護聖人聖マルコを象徴する存在、つまりサン・マルコの獅子として位置づけられました。現在、円柱の上に置かれている像はレプリカであり、オリジナルのブロンズ像は、修復を経てドゥカーレ宮殿内に大切に保管されています。

聖テオドーロ像

一方、西側の円柱の上には、聖マルコよりも古くからヴェネツィアの守護聖人とされていた聖テオドーロの像が立っています。ワニの上に乗り、槍を持つこの像は、龍を退治したという聖テオドーロの伝説に基づいています。この二つの円柱と像は、ヴェネツィアの歴史と文化を物語る重要な要素となっています。ヴェネツィアを訪れた際には、これらの像を間近に見ることで、この都市の豊かな歴史に触れることができるでしょう。

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