ヴェリヨ・トルミス

ヴェリヨ・トルミスの音楽世界

ヴェリヨ・トルミス（1930年8月7日 - 2017年1月21日）は、エストニア出身の作曲家であり、特に合唱音楽の分野でその名を知られる人物です。在世中、彼は20世紀エストニアの最も重要な作曲家の一人とされ、多数の無伴奏合唱曲を創作しました。これらの作品は、エストニア伝統の民謡に基づいており、その歌詞や旋律、スタイルの全てに古き良き民謡の影響が見受けられます。

初期の経歴

トルミスは、ハリュ県クーサルで音楽教師であった父のもとに生まれ、幼少期から合唱を始めました。父の影響により、オルガンの音色に親しみ、これが後の作曲における特有の音楽テクスチュアや楽器法に繋がることとなります。1943年からタリン音楽学校で音楽教育を受け始めましたが、第二次世界大戦の影響と自身の健康問題から一時学業を中断。1949年にはタリン音楽院に入学し、さらにモスクワ音楽院での学びを経て、1960年代にはティーチングを行いつつ、主に作曲家として活動を始めました。

作品とその広がり

トルミスは、2000年に創作活動から退くまでに、500以上の合唱曲を含む多様なジャンルの作品を手掛けました。特に1970年代後半から1980年代にかけて、政治的メッセージを含む多くの作品が検閲に遭ったにもかかわらず、彼の名声はソ連やその他の東欧の国々で高まり、20世紀の合唱音楽において重要な貢献を為した作曲家として名を馳せます。また、近年ではアメリカでも彼の音楽が次第に認知されるようになっています。

日本でも、トルミスの作品は合唱コンクールで頻繁に演奏されるようになっており、東京混声合唱団が1995年に『幼き頃の思い出』を演奏した際や、1999年の全日本合唱コンクールで広くその名が知られるようになりました。

主要作品「鉄への呪い」

その中でも特に有名な作品『鉄への呪い』（1972年）は、原始的なシャーマニズムのテーマを扱い、戦争の邪悪さを寓話的に表現しています。この曲はソ連政府による演奏禁止令に直面した作品の一つとしても知られています。

トルミスの言葉と文化への信念

トルミスは、民謡を利用するのではなく、民謡が彼を利用していると語り、伝統音楽が文化財として守られるべきだという信念を持っていました。彼の作品は、エストニア及びバルト諸国の文化を次世代へと繋ぐ重要な役割を果たしています。

代表的な作品リスト

1. キーヌ島の婚礼歌 Kihnu pulmalaulud（1959）
2. 秋の風景 Sügismaastikud（1964）
3. エストニアの暦 Eesti kalendrilaulud（1966-67）
4. 鉄への呪い Raua needmine（1972）
5. 大波の魔術 Incantatio maris aestuosi（1996）

これらの作品を通じて、トルミスはエストニアの音楽シーンだけでなく、国際的な舞台でもその存在を示し続けています。彼の音楽は今もなお、多くの聴衆に影響を与え、エストニアの文化の象徴となっています。

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