ヴェリー・ベスト・オブ・ヴァン・ヘイレン

2004年、アメリカを代表するハードロックバンド、ヴァン・ヘイレンは、キャリア通算2作目となるベスト・アルバム『ヴェリー・ベスト・オブ・ヴァン・ヘイレン』を発表しました。

発売背景とその内容

このベスト盤は、同年にサミー・ヘイガーがバンドに復帰し、カムバック・ツアーを行ったタイミングに合わせて世に送り出されました。収録内容は、バンドの黄金期を支えた2人の主要ボーカリスト、初代のデイヴィッド・リー・ロスと2代目のサミー・ヘイガーが在籍していた時期の楽曲から厳選されています。これにより、ヴァン・ヘイレンがロス時代に確立したパーティー・ロックの側面と、ヘイガー時代に深化させたメロディアスなロックの両面を網羅する構成となっています。一方、ゲイリー・シェローンがボーカルを務めた時代の楽曲は、残念ながらこのアルバムには含まれていません。

新録曲の追加

本作には、既存のヒット曲に加え、サミー・ヘイガーを含む当時のラインナップによって新たにレコーディングされた3曲が収録されています。これらの新曲は、「イッツ・アバウト・タイム」「アップ・フォー・ブレックファスト」「ラーニング・トゥ・シー」です。興味深いことに、これらの楽曲のバッキング・トラックは、ベーシストのマイケル・アンソニーが一時的にバンド活動から離れていた時期に録音されており、アンソニーは完成した楽曲でコーラス部分のみに参加するという形を取っています。ヘイガー自身は、後年のインタビュー（2021年）で「アップ・フォー・ブレックファスト」を自信作として挙げ、自身のソロ活動におけるセットリストへの追加も検討していると語っています。

商業的成功と評価

『ヴェリー・ベスト・オブ・ヴァン・ヘイレン』は、バンドの母国であるアメリカで一定の成功を収めました。全米アルバムチャート「Billboard 200」では最高3位を記録し、通算17週にわたってチャート圏内に留まりました。その実績が評価され、2004年8月にはアメリカレコード協会（RIAA）からプラチナ・ディスクの認定を受けています。

音楽評論家からの評価も概ね好意的でした。特に音楽レビューサイト「オールミュージック」の評論家であるスティーヴン・トーマス・アールワインは、このアルバムに5点満点中4.5点という高評価を与えています。アールワインはレビューの中で、カリスマ的なデイヴィッド・リー・ロスを崇拝するファンが彼の時代の楽曲に魅力を感じるのは当然としながらも、ロス時代とヘイガー時代の音楽性それぞれに優れた点があり、最終的にはどちらも質の高い音楽として成立していると述べています。しかし同時に、ロス時代とヘイガー時代の楽曲が時系列や音楽的な流れを考慮せず並べられている点は、両者の魅力や変遷を理解する上で分かりにくさを生んでいるとも指摘しています。

収録楽曲と参加ミュージシャン

本作は2枚組のCDで構成され、デイヴィッド・リー・ロス時代とサミー・ヘイガー時代のヒット曲や代表曲が多数収められています。「Eruption」、「Jump」、「Panama」、「Runnin' with the Devil」といったロス時代のアンセムから、「Dreams」、「Why Can't This Be Love」、「Right Now」といったヘイガー時代の人気曲まで幅広く選ばれています。また、先述の新曲3曲のほか、一部ライブ音源も収録されており、彼らのパワフルなパフォーマンスも垣間見ることができます。

このアルバムに参加している主なミュージシャンは以下の通りです。

サミー・ヘイガー: ボーカル（主にディスク1の一部、ディスク2の一部）
デイヴィッド・リー・ロス: ボーカル（主にディスク1の一部、ディスク2の一部）
エドワード・ヴァン・ヘイレン: ギター、キーボード。新曲ではベースも演奏。
マイケル・アンソニー: ベース、バッキング・ボーカル。新曲ではコーラスのみ。
* アレックス・ヴァン・ヘイレン: ドラムス

『ヴェリー・ベスト・オブ・ヴァン・ヘイレン』は、バンドの主要な二つの時代を一度に聴くことができる、入門者にとってもファンにとっても価値のある作品と言えるでしょう。

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