ヴェルクマイスター音律

ヴェルクマイスター音律

ヴェルクマイスター音律は、17世紀のドイツの音楽家アンドレアス・ヴェルクマイスターによって考案、提唱された複数の音律です。彼の著作において詳細に解説されており、特に鍵盤楽器の調律に応用されました。

ヴェルクマイスター音律の種類

ヴェルクマイスターは、いくつかの異なる音律を提案しており、それらは通常、番号で区別されます。これらの番号は、ヴェルクマイスターが1691年に発表した論文における音律の提示順序、またはモノコード上のラベリングに対応しています。

重要な音律としては以下のものがあります。

ヴェルクマイスターI (III): 1/4コンマ分割に基づく「正しいテンペラメント」と呼ばれ、C-G、G-D、D-A、B-F♯の五度を1/4コンマ狭くすることで、半音階音楽に適した音律を実現しています。近現代ではJ.S.バッハの音楽に適しているとして注目されています。
ヴェルクマイスターII (IV): 1/3コンマ分割に基づき、C-G、D-A、E-B、F♯-C♯、B♭-Fの五度を狭め、G♯-D♯、E♭-B♭の五度を広げることで、全音階音楽に適した音律を実現しています。
ヴェルクマイスターIII (V): 1/4コンマ分割に基づき、D-A、A-E、F♯-C♯、C♯-G♯、F-Cの五度を狭め、G♯-D♯の五度を広げることで、平均律に近い響きを実現しています。
ヴェルクマイスターIV (VI): セプテナリウス調律と呼ばれ、モノコードの長さを196分割した数値に基づいて音律を決定します。有理数の周波数比を使用しており、他の音律とは異なる数学的なアプローチが用いられています。

ヴェルクマイスター音律の特徴

ヴェルクマイスター音律の最大の特徴は、純正律と平均律の中間的な性質を持つ点にあります。特定の五度を狭めたり広げたりすることで、各調において異なる響きを生み出し、楽曲に多様な表情を与えることができます。また、転調による音程のずれを最小限に抑えつつ、各調の個性を活かすことができるため、バロック音楽などの演奏に適しているとされています。

コンマについて

ヴェルクマイスター音律の説明には、「コンマ」という音程の単位が登場します。コンマにはシントニックコンマとピタゴラスコンマの2種類が存在しますが、ヴェルクマイスターはどちらのコンマを使用しているか明示していません。ただし、ヴェルクマイスターは、これらのコンマの差であるスキスマは小さく、五度の間に割り振ることができると主張しています。

セプテナリウス調律について

セプテナリウス調律は、他のヴェルクマイスター音律とは異なり、コンマの分割ではなく、モノコード上の弦長を直接的に示すことで調律を行います。ヴェルクマイスターは、この調律を「コンマの分割を全く行わないが、にもかかわらず実際上は本当に満足できるほど正しい追加の音律」と評しています。

ヴェルクマイスター音律の現代的な意義

ヴェルクマイスター音律は、バロック音楽の演奏において、楽曲の持つ本来の響きを再現するために重要な役割を果たします。また、様々な調律法が存在することを知ることで、音楽表現の可能性を広げることができます。近年では、古楽演奏の隆盛とともに、ヴェルクマイスター音律をはじめとする様々な調律法への関心が高まっています。

参考文献

* (記事中に記載されている外部リンク)

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