ヴェンカタ1世

ヴェンカタ1世の生涯とその影響

ヴェンカタ1世（またの名をヴェンカタ・ラーヤ）は、南インドに位置するヴィジャヤナガル王国のトゥルヴァ朝の君主であり、1542年という短い期間のみその王位に在位していました。この君主は、1542年に父アチュタ・デーヴァ・ラーヤの死去を受けて即位しましたが、その治世は権力の乱れや他の有力者との対立により、非常に不安定なものでした。

王位継承と権力闘争

1542年、ヴェンカタ1世は幼いながらも王位を継承しました。しかし、実際の権力は母方の叔父であるサラカージュ・チンナ・ティルマラが握り、王位は名ばかりのものでした。さらに、クリシュナ・デーヴァ・ラーヤの娘婿であるラーマ・ラーヤも政権に影響力を持つ存在であり、彼とチンナ・ティルマラとの間には対立が生じました。この政治的混乱の中で、ヴェンカタ1世の立場は非常に危ういものでした。

同年、ヴェンカタ1世はサラカージュ・チンナ・ティルマラの手によって殺害されました。この事件により、多くの王族が命を落とすこととなりました。王子の死は、その後の王国の運命に深刻な影響を与えました。

サラカージュ・チンナ・ティルマラの権力掌握

ヴェンカタ1世が亡くなった後、権力の空白を埋めるべく、ラーマ・ラーヤはサダーシヴァ・ラーヤを擁立することを考えました。サダーシヴァ・ラーヤはヴェンカタ1世の従兄弟であり、彼の支援により権力を取り戻す機会を得ようとしました。しかし、サラカージュ・チンナ・ティルマラはこれに対抗し、ビジャープル王イブラーヒーム・アーディル・シャー1世をヴィジャヤナガルに呼び寄せ、サダーシヴァ・ラーヤを7日間王としました。

しかし、ヴィジャヤナガルの貴族たちはこの措置を受け入れず、ビジャープル王に対して適切な報酬を支払う条件で、彼を都市から退去させました。1543年に入ると、サラカージュ・チンナ・ティルマラは王位を宣言し、ラーマ・ラーヤと戦を繰り広げましたが、最終的には敗北し殺されてしまいました。

王国の新たな時代

このサラカージュ・チンナ・ティルマラの敗北により、ラーマ・ラーヤとその弟ティルマラ・デーヴァ・ラーヤは王国の政治を再支配することになりました。この権力闘争は、王国の安定をもたらすはずでしたが、実際にはさらなる不安定な時代の始まりを予感させるものでした。

このように、ヴェンカタ1世の短い治世は、権力を巡る激しい争いと王国の動乱の象徴となりました。彼の死後、ヴィジャヤナガル王国は再び混乱にさらされ、その歴史において重要な転機を迎えることになるのです。

参考文献

• - 辛島昇『新版 世界各国史7 南アジア史』山川出版社、2004年。
• - 辛島昇『世界歴史大系 南アジア史3―南インド―』山川出版社、2007年。
• - S・スブラフマニヤム著、三田昌彦・太田信宏訳『接続された歴史 インドとヨーロッパ』名古屋大学出版会、2009年。

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