ヴィジャヤナガル王国

ヴィジャヤナガル王国：南インドの興亡

ヴィジャヤナガル王国は、14世紀初頭から1[[7世紀]]中頃まで、南インドのトゥンガバドラー川とクリシュナ川以南の広大な地域を支配したヒンドゥー王朝です。現在のカルナータカ州南部とアーンドラ・プラデーシュ州南部に相当する地域をその版図に含み、コモリン岬にまで及ぶ勢力を誇りました。首都はヴィジャヤナガルでしたが、ペヌコンダ、チャンドラギリ、ヴェールールなども首都として機能した時期があります。

建国とサンガマ朝

14世紀に入ると、デリー・スルターン朝によるデカン地方や南インドのヒンドゥー王朝の征服が進みます。この状況下で、ハリハラとブッカ兄弟がヴィジャヤナガル王国を建国しました。有力な説では、彼らはカーカティーヤ朝またはホイサラ朝に仕えていた人物で、トゥグルク朝に捕らえられた後、ムハンマド・ビン・トゥグルクの失政に乗じて独立を果たしたとされています。1336年、彼らはトゥンガバドラー川の南岸にヴィジャヤナガル（勝利の都）を築き、王国を樹立しました。この最初の王朝は、ハリハラとブッカの父の名にちなんでサンガマ朝と呼ばれています。

周辺勢力との抗争と版図拡大

サンガマ朝は、周辺勢力との激しい抗争を繰り広げました。1346年にはホイサラ朝を滅ぼし、版図を拡大しました。しかし、1347年にはデカン地方にバフマニー朝が成立し、ライチュール地方の支配権を巡って長期にわたる紛争が始まりました。ライチュール地方は経済的に重要な地域であり、その支配権は両王朝にとって大きな関心事でした。この抗争は、決定的な勝者を生むことなく、最終的には現状維持という形で終結しました。

その後も、サンガマ朝はマドゥライ・スルターン朝を併合するなど、版図拡大に成功しました。バフマニー朝との抗争も継続しましたが、クリシュナ川とゴーダーヴァリ川流域の支配を巡る争いは、決定的な決着に至りませんでした。しかし、マラバール海岸地方においてはゴアをバフマニー朝から奪取するなどの成果も上げています。デーヴァ・ラーヤ2世の治世には、軍制改革を行い、ムスリム兵士も取り込むことで軍の戦力を強化しました。この改革により、一時的にバフマニー朝を圧迫する勢力となりましたが、決定的な勝利には至らず、ライチュール地方の帰属は結局最後まで争われ続けました。宗教面においては、ヒンドゥー教徒とイスラーム教徒の共存を許容する宗教寛容な政策がとられ、「ヒンドゥーの王にしてスルターン」を名乗る王もいました。

サールヴァ朝とトゥルヴァ朝

デーヴァ・ラーヤ2世の死後、ヴィジャヤナガル王国は国内の混乱とバフマニー朝、ガジャパティ朝の侵攻により危機に直面します。この危機を救ったのはサールヴァ家のサールヴァ・ナラシンハでした。彼は1486年にサンガマ朝の王位を簒奪し、サールヴァ朝を開きました。しかし、サールヴァ朝は短命に終わり、トゥルヴァ家のトゥルヴァ・ナラサー・ナーヤカが実権を握り、やがて息子のヴィーラ・ナラシンハ・ラーヤが王位を継承してトゥルヴァ朝を建てました。

トゥルヴァ朝において、クリシュナ・デーヴァ・ラーヤの治世はヴィジャヤナガル王国の最盛期となりました。彼は、ガジャパティ朝やビジャープル王国などの周辺勢力に勝利し、領土を大幅に拡大しました。また、彼は文芸を保護し、宗教的寛容を旨とした優れた統治者としても知られています。クリシュナ・デーヴァ・ラーヤの治世は、貿易の盛況、都市開発、農業基盤の整備など、あらゆる面で王国の発展が著しかった時期です。彼はポルトガルと積極的に貿易を行い、西アジアからの軍馬の輸入を確保しました。クリシュナ・デーヴァ・ラーヤは、ナーヤカ制という新たな領主制度を確立するなど、税収の安定化にも努めました。その治世下、ヴィジャヤナガル王国は、インドにおける貿易の中心地として繁栄しました。

ラーマ・ラーヤとターリコータの戦い

クリシュナ・デーヴァ・ラーヤの死後、ヴィジャヤナガル王国は再び内紛と周辺勢力の圧力にさらされます。ラーマ・ラーヤは摂政として実権を握り、デカン・スルターン朝を分裂させようとする政策をとりましたが、結果的に5つのデカン・スルターン朝が同盟を組み、ヴィジャヤナガル王国に侵攻してきます。1565年、ターリコータの戦いでヴィジャヤナガル軍は決定的な敗北を喫し、首都ヴィジャヤナガルは破壊されました。この敗北は、ヴィジャヤナガル王国の衰退の始まりとなりました。

アーラヴィードゥ朝と王国の滅亡

ターリコータの戦いの後、アーラヴィードゥ朝が成立し、ペヌコンダを新たな首都としました。しかし、王国は次第に衰退していきました。ナーヤカと呼ばれる地方の有力者たちが半独立的な勢力として台頭し、王国の支配力は弱まりました。周辺のデカン・スルターン朝は勢力を拡大し、ヴィジャヤナガル王国への圧迫を強めていきました。ヴェンカタ2世は一時的に王国の勢力を回復させましたが、最終的には王国内紛と周辺勢力の侵攻を食い止めることができませんでした。1[[7世紀]]半ば、ヴィジャヤナガル王国は事実上滅亡しました。

ティルパティの聖地としての継続

ヴィジャヤナガル王国の滅亡後も、ティルパティはヒンドゥー教徒にとって重要な聖地であり続けました。ムガル帝国やその後の支配者たちも、ティルパティの寺院を破壊することを避けました。現在も、ティルパティはヴェンカテーシュヴァラ寺院をはじめとする多くの寺院が存在し、ヒンドゥー教徒の聖地として崇められています。ヴィジャヤナガル王国は滅びましたが、その宗教的・文化的影響は、南インドの各地に受け継がれています。

もう一度検索