ヴェーリア (アシェーア)

ヴェーリア地区：古代ギリシャ哲学の中心地と、その歴史的遺産

イタリア南部、カンパーニア州サレルノ県アシェーアにあるヴェーリア地区は、悠久の歴史を刻む古代都市エレアの遺跡が残る地として知られています。その歴史は、紀元前6世紀、マグナ・グラエキア時代にまで遡ります。

ギリシャからの移民と都市の建設

ヘロドトスの記述によれば、紀元前545年、ペルシャの侵略を逃れたイオニア人たちが、長旅の末、現在のイタリア南部にたどり着き、この地にヒエレという都市を建設しました。その後、エレ、そしてエレアと改名されたこの都市は、地中海世界における重要な拠点へと発展していきます。ポカイアと同じ緯度に位置することから、イオニア人にとって、故郷を思わせる土地だったのかもしれません。

エレア派哲学の隆盛

ヴェーリアは、単なる交易都市ではありませんでした。この都市は、古代ギリシャ哲学において重要な役割を果たしたエレア派の拠点として知られています。パルメニデスやゼノンといった、後世に大きな影響を与えた哲学者たちがこの地で活躍し、独自の哲学体系を構築しました。彼らの思想は、後の哲学や科学の発展に大きく貢献することになります。

ローマ時代を経て、現代へ

ルカニア人の支配を免れたエレアでしたが、紀元前273年にはローマに併合され、その歴史は新たな局面を迎えました。ローマ帝国の支配下においても、エレアは独自の文化を維持しながら、地中海世界における交易や文化交流の中継点としての役割を担っていたと考えられます。

遺跡と世界遺産登録

現在、ヴェーリア地区には、古代都市エレアの壮大な遺跡が残されています。総延長約5kmに及ぶ市壁は、異なる時代の建造物からなり、地元産の石灰岩と、独特な形状のギリシャ式レンガで造られています。門や塔、貯水槽などの遺跡は、当時の都市生活の様子を今に伝えています。これらの遺跡は、古代都市エレアの栄華を偲ばせる貴重なものです。

ヴェーリア地区を含むチレントおよびヴァッロ・ディ・ディアーノ国立公園は、その歴史的、文化的価値が認められ、1998年にユネスコの世界遺産に登録されました。登録基準としては、「現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠」、「人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例」が挙げられています。

まとめ

ヴェーリア地区は、古代ギリシャの植民都市エレアの遺跡と、エレア派哲学の隆盛という二つの側面を持つ、歴史的に重要な場所です。その遺跡は、単なる石造物ではなく、古代の人々の知恵と技術、そして哲学的探求の足跡を刻む、貴重な文化遺産と言えるでしょう。現在も、その歴史的遺産は、人々を魅了し続けています。訪れる人々は、古代の偉大な哲学者の息遣いを感じ、地中海の豊かな歴史に思いを馳せることができるでしょう。

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