チレントおよびヴァッロ・ディ・ディアーノ国立公園
イタリアの
サレルノ県に位置するチレントおよびヴァッロ・ディ・ディアーノ
国立公園は、
1991年に設立された広大な自然保護区です。当初は36,000
ヘクタールでしたが、後に拡張され、現在は約180,000
ヘクタールに及んでいます。この公園は、県南部のセーレ平原から
バジリカータ州にまたがり、ティレニア海に至るまで、8つの山岳共同体と80の
コムーネの一部を包含しています。
地理
公園内は、内陸部の
カルスト地形が特徴的な
苦灰岩の山脈、海岸部の
崖、
湾、
砂浜、海食洞、淡水の
泉など、多様な地形が広がっています。
植生も豊かで、
地中海沿岸の
硬葉樹林をはじめ、ガリーグ、
セイヨウヒイラギガシの樹林、
オーク、
シデ、ハンノキ属の混合林、ヨーロッパブナの天然林、高地
草原、高山帯の
氷河まで、標高によって変化に富んだ景観が楽しめます。また、ハイイロイワシャコ、エレオノラハヤブサなどの鳥類、
ユーラシアカワウソ、コルシカノウサギ、チチュウカイキクガシラコウモリなどの哺乳類が生息しており、豊かな生態系を育んでいます。
歴史
チレント地域の建築投機や観光開発による自然破壊の危機は、1973年の国際会議で既に指摘されていました。その後、
1991年に
国立公園として正式に設立され、自然保護への取り組みが始まりました。公園の設立は、
1991年12月6日の法律第394号によって定められ、その後も環境省の布告や大臣通達によって、周辺地域の対策が進められました。
1998年には、現在の181,048
ヘクタールに及ぶ対象区域が確定しました。
考古学的遺跡
公園内には、古代ギリシャ時代からの重要な遺跡が数多く存在します。
マリーナ・ディ・カメロータの考古地区
モンテ・プルーノ=ロシーニョ考古地区
ペストゥム考古地区 (カパッチョ=ペストゥム)
エレーア=ヴェーリア考古地区 (アシェーア)
これらの遺跡は、古代文明の繁栄を今に伝える貴重な遺産です。
観光地
公園内には、自然景観だけでなく、歴史的な観光スポットも点在しています。
チレンターナ海岸:美しい海岸線が広がる地域です。
ペストゥム:古代ギリシャの神殿跡が残る重要な遺跡です。
カステル・サン・ロレンツォ:ペストゥムから26kmの場所に位置する歴史的な街です。
ロシーニョ・ヴェッキア:中世の面影を残す古い村です。
カステルチーヴィタの
洞窟:自然が作り出した神秘的な
洞窟です。
天使の
洞窟:サンタンジェロ・ア・ファザネッラにある美しい
洞窟です。
パドゥーラ修道院:壮大なバロック様式の修道院です。
モンテ・チェルヴァーティ:サンツァにある山で、ハイキングが楽しめます。
博物館
公園内には、地域の歴史や文化、自然を学ぶことができる博物館がいくつかあります。
ヴィーヴォ・デル・マーレ博物館:カメロータにある海の博物館です。
農村文明博物館:ロシーニョにある農村文化を伝える博物館です。
アンティクアリウムとモンテ・プルーノ遺跡の考古学研究所:ロシーニョにあり、考古学の研究施設と展示施設があります。
コルレート・モンフォルテの自然科学博物館:地域の自然に関する博物館です。
パドゥーラの西ルカーニア考古学博物館:地域の考古学に関する博物館です。
ペストゥム国立考古学博物館:カパッチョ=ペストゥムにある古代ギリシャの遺跡に関する博物館です。
カステル・サン・ロレンツォの農村文化および地域手工芸博物館:地域の生活文化を紹介する博物館です。
この
国立公園は、
マグナ・グラエキア時代や中世の歴史を伝える
文化的景観として、
1998年にユネスコの
世界遺産に登録されました。登録名は「
パエストゥムとヴェーリアの考古遺跡群やパドゥーラのカルトゥジオ修道院を含むチレントおよびヴァッロ・ディ・ディアーノ
国立公園」です。
登録基準は以下の通りです。
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠であること。
* (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例であること。
行き方
チレントへはカパッチョ=ペストゥムまたはサプリから、ヴァッロ・ディ・ディアーノへはサーラ・コンシリーナからアクセスするのが便利です。ただし、公園は広大であり、交通インフラも十分に整備されていないため、特定の場所に到達するのが難しい場合があります。
公園内の詳細な
コムーネの情報は、別途参照してください。
まとめ
チレントおよびヴァッロ・ディ・ディアーノ
国立公園は、豊かな自然と古代からの歴史が調和した魅力的な場所です。ユネスコの
世界遺産にも登録されており、その
文化的景観は訪れる人々を魅了します。多様な地形と生態系、古代遺跡、そして歴史的な町並みを巡る旅は、きっと忘れられない思い出となるでしょう。