ヴォイヴォディナ自治州 (1945年-1963年)

ヴォイヴォディナ自治州：歴史的背景と変遷

ヴォイヴォディナ自治州（セルビア・クロアチア語: Аутономна Покрајина Војводина / Autonomna Pokrajina Vojvodina）は、第二次世界大戦後のユーゴスラビアにおいて、セルビア人民共和国の一部として1945年から1963年まで存在した自治州です。本稿では、その成立から変遷、そしてユーゴスラビアにおける位置づけについて詳細に解説します。

成立の背景

1945年、ユーゴスラビア連邦人民共和国が成立し、その構成国の一つであるセルビア人民共和国内に、ヴォイヴォディナ地方が自治州として設置されました。この地域は、スレム、バナト、バチュカといった歴史的な地方を含み、多様な民族が共存する地域でした。自治州設置以前、この地域はユーゴスラビア王国時代にドナウ州と呼ばれていましたが、自治州の名称には、歴史的な呼称である「ヴォイヴォディナ」が採用されました。州都はノヴィ・サドに定められました。

自治権の範囲

初期のヴォイヴォディナ自治州は、セルビア共和国内における部分的な自治権のみを認められていました。これは、連邦全体の統一性を維持しつつ、地域ごとの特殊な事情に配慮するための措置でした。しかし、ヴォイヴォディナの住民は、より高度な自治権を求めるようになり、その後の憲法改正につながっていきます。

ヴォイヴォディナ社会主義自治州への改名

1963年の憲法改正により、ヴォイヴォディナ自治州は「ヴォイヴォディナ社会主義自治州」へと改名されました。この改名は、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国のイデオロギーを反映したものであり、自治州の政治体制が社会主義的な色彩を強めたことを意味します。しかし、自治権の範囲は依然として限定的なものでした。

1974年憲法による自治権拡大

1974年のユーゴスラビア連邦憲法改正は、ヴォイヴォディナにとって大きな転換点となりました。この改正により、ヴォイヴォディナはユーゴスラビア連邦の構成要素とみなされるようになり、連邦における地位が大幅に向上しました。具体的には、ユーゴスラビアの各構成国の代表者1名ずつからなる幹部会において、セルビアや他の共和国と対等の議席を持つことが認められました。これにより、ヴォイヴォディナは連邦レベルでの意思決定に直接関与できるようになったのです。

その後

1990年、ヴォイヴォディナ自治州はセルビア共和国の自治州となりました。

関連項目

セルビア
セルビアの歴史
* ユーゴスラビア社会主義連邦共和国

ヴォイヴォディナ自治州は、ユーゴスラビアの歴史において重要な役割を果たしました。その成立、変遷、そして自治権の拡大は、ユーゴスラビアという多民族国家の複雑な政治構造を理解する上で不可欠な要素と言えるでしょう。

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