スレム

スレム地方：歴史と文化が交差する肥沃な大地

スレム（Srem）地方は、ヨーロッパ中部のパンノニア平原の一角を占める肥沃な地域であり、ドナウ川とサヴァ川に挟まれた場所に位置しています。この地域は、セルビア語ではСрем、クロアチア語ではSrijem、ハンガリー語ではSzerémまたはSzerémség、ラテン語ではSyrmia、ドイツ語ではSyrmienと呼ばれ、多様な歴史と文化が交差する場所です。1991年以降、スレム地方はセルビアとクロアチアの領土に分かれています。

スレムの呼称

スレム地方は、その歴史的背景から様々な言語で異なる名前を持っています。

セルビア語: Срем (Srem)
クロアチア語: Srijem
ラテン語: Syrmia, Sirmium
ドイツ語: Syrmien
ハンガリー語: Szerémség, Szerém
スロバキア語: Sriem
パンノニア・ルシン語: Срим (Srim)
トルコ語: Sirem
ウクライナ語: Срем (Srem), Срім (Srim), Срим (Srim)
フランス語: Syrmie

スレムの歴史

スレム地方は、その長い歴史の中で多くの支配者によって統治されてきました。ローマ帝国、フン族、アヴァール、ゲピド族、東ローマ帝国、フランク王国、ブルガリア帝国、パンノニア・クロアチア、ハンガリー王国、オスマン帝国、ハプスブルク君主国、オーストリア帝国、オーストリア＝ハンガリー帝国、セルビア人・クロアチア人・スロヴェニア人王国（後のユーゴスラビア王国）、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国などがその例です。1945年にはジラス委員会によって、東部がセルビア、西部がクロアチアの領土とされました。1992年にクロアチアが独立を宣言し、セルビアとの国境が確定しました。

古代

スレムの呼称は、古代都市シルミウムに由来します。シルミウムは現在のスレムスカ・ミトロヴィツァに相当し、紀元前3世紀にイリュリア人の町として成立しました。紀元前1世紀にはローマ帝国によって征服され、ローマ帝国にとって重要な都市となりました。シルミウムはパンノニアの経済的中心地であり、帝国の4つの首都の一つでした。また、10人のローマ皇帝がこの町やその周辺で生まれています。

中世

6世紀には、スレムは東ローマ帝国のパンノニア州の一部となりました。7世紀にはブルガール人のクベルがアヴァール人の臣下としてこの地を統治しました。9世紀初頭には、リュデヴィト・ポサヴスキの反乱に乗じて地元のスラヴ人が一時的に彼の支配下に入りました。その後、フランク人やブルガリア人による支配を経て、11世紀には公爵セルモンがスレムを支配し、独自の金貨を発行しました。セルモンの死後、スレム地方はビザンティン帝国の領域に組み込まれましたが、12世紀にはハンガリー王国によって征服されました。

13世紀には、セルビア王国の王ステファン・ドラグティンがスレム地方の王として君臨し、スレム王国を築きました。その後、ハンガリー王国との間で領有権争いが起こり、15世紀にはオスマン帝国の侵攻を受けることとなりました。

近世・近現代

16世紀にはオスマン帝国の支配下に入り、シレム・サンジャクが設置されました。17世紀から18世紀にかけてはハプスブルク君主国がスレムを支配し、軍政国境地帯に組み込みました。18世紀にはセレーム県が設けられましたが、その後も軍政国境地帯の一部として残されました。19世紀には、ティツァンの反乱と呼ばれる農民の反乱が起こり、1848年から1849年にかけては、スレムの大部分がセルビア・ヴォイヴォディナに編入されました。第一次世界大戦後、スレムはセルビア王国の一部となり、後にユーゴスラビア王国となりました。第二次世界大戦中にはクロアチア独立国の領土とされ、戦後にはユーゴスラビア社会主義連邦共和国の一部となりました。1991年のクロアチア独立後、スレム地方はセルビアとクロアチアに分割されることとなりました。

スレムの住民

スレム地方は、歴史的に多様な民族が居住してきた地域です。セルビア人、クロアチア人、ドイツ人、ハンガリー人、スロバキア人、パンノニア・ルシン人などがその例です。2002年のセルビアの国勢調査によると、セルビア領のスレムにはセルビア人が多数を占めていますが、クロアチア人、スロバキア人、パンノニア・ルシン人、マジャル人なども居住しています。また、2001年のクロアチアの国勢調査によると、クロアチア領のヴコヴァル＝スリイェム郡にはクロアチア人が多数を占めていますが、セルビア人、マジャル人、パンノニア・ルシン人、スロバキア人なども居住しています。

スレムの地理

スレム地方は、ドナウ川とサヴァ川に挟まれた肥沃な平地であり、フルシュカ・ゴーラ山などの山地も存在します。セルビアとクロアチアの国境線は複雑に入り組んでおり、イロクやシドなどの地域が国境を挟んで隣接しています。スレムの主要な都市としては、スレムスカ・ミトロヴィツァ、ルマ、インジヤ、ヴィンコヴツィ、ヴコヴァルなどが挙げられます。

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