ノヴィ・サド

ノヴィ・サド：ドナウ川に栄える歴史都市

ノヴィ・サドは、セルビア北部のヴォイヴォディナ自治州に位置する、同州の州都であり南バチュカ郡の中心地である都市です。ドナウ川沿いのパンノニア平原南部に広がり、首都ベオグラードに次ぐセルビア第二の都市として知られています。

歴史

この地域には、石器時代から人が居住していた痕跡が残されています。ケルト人、ローマ人、フン族、ビザンティン帝国など、様々な勢力の支配を受け、10世紀から12世紀にかけてはハンガリー王国の支配下に置かれました。13世紀から16世紀にかけては、現在のノヴィ・サド市街地周辺に複数の集落が存在していました。これらの集落はハンガリー人とスラヴ系の住民が混在しており、オスマン帝国支配時代にはセルビア人が多く暮らしていました。

17世紀末からのハプスブルク家支配期、ペトロヴァラディン要塞に居住が制限された正教のセルビア人たちはドナウ川左岸に集落を形成し、それがノヴィ・サドの起源となりました。1748年には帝国自由都市の地位を与えられ、18世紀から19世紀にかけては、セルビア人の文化の中心地として発展し、「セルビア人のアテネ」と呼ばれるようになりました。

1848年革命では破壊されましたが、その後復興を遂げました。しかし、1849年にはハンガリー軍の攻撃を受け、人口が激減しました。オーストリア＝ハンガリー帝国時代にはマジャル化政策の影響を受けながらも、セルビア人の文化拠点としての地位を維持しました。

第一次世界大戦後、セルビア王国の一部となり、第二次世界大戦中はハンガリーに併合されましたが、1944年に解放されました。1942年のノヴィ・サド蜂起では、多数の市民が犠牲となりました。戦後、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国の一部となり、急速な工業化が進みました。ユーゴスラビア紛争時にはNATO空爆を受け、街に大きな被害が出ましたが、その後復興し、現在に至っています。

地理と気候

ノヴィ・サドはドナウ川を挟んでバチュカ地方とスレム地方にまたがり、北にはドナウ＝ティサ＝ドナウ運河が流れています。南にはフルシュカ・ゴーラ山脈が連なっています。気候は大陸性気候で、四季があります。秋は長く温暖で、冬は比較的穏やかです。春は短く雨が多く、夏は暑くなります。コシャヴァと呼ばれる東南東風が吹き、時には強い風や雪をもたらすこともあります。

街並み

ノヴィ・サドの街並みは、1848年革命による破壊の影響もあり、19世紀以降の建物が多くを占めています。旧市街には歴史的な建物が残り、周辺には戸建て住宅が立ち並んでいます。社会主義時代には、近代的な高層建築が建設され、街の景観は大きく変化しました。しかし、高層ビルは多くはなく、主に3階から6階建てのアパートが多いのが特徴です。交通網は整備されており、人口増加や自動車の増加にもかかわらず、深刻な渋滞は発生していません。

地区

ノヴィ・サドはいくつかの地区に分けられています。スタリ・グラード（旧市街）、ロトクヴァリヤ、ポドバラ、サライカなどは歴史的な地区です。ドナウ川右岸のスレムスカ・カメニツァ、ペトロヴァラディンもノヴィ・サド市街地に含まれています。リマン、ビストリツァ、デテリナラなどは戦後開発された新しい地区です。近年は、グルバヴィツァ地区など、再開発が進められています。また、市街地の周辺部には、戸建て住宅が立ち並ぶ新しい住宅地が拡大しています。

郊外の集落

ノヴィ・サド市には、市街地以外にも、12の村と1つの町が含まれます。フトグ、ヴェテルニクなどは特に近年拡大し、市街地と一体化しつつあります。スタリ・レディンツィなどは比較的孤立した集落です。

行政

ノヴィ・サドはヴォイヴォディナ自治州の行政の中心地であり、州議会や州政府が置かれています。市の行政は、直接選挙で選ばれた市議会と市長によって行われています。

国際関係

ノヴィ・サドは、世界各国との姉妹都市提携を結んでいます。

人口

ノヴィ・サドはヴォイヴォディナで最大、セルビアではベオグラードに次ぐ第二の都市です。人口は増加傾向にあり、近年はセルビア国内各地からの移住者が多いです。市街地ではセルビア人が多数派ですが、キサチュ村ではスロバキア人が多数派です。

経済

ノヴィ・サドは、ヴォイヴォディナ地方の経済の中心地であり、セルビアでも重要な経済拠点の一つです。かつては製造業が中心でしたが、近年は第三次産業が中心となっています。中小企業が経済成長を牽引しています。多くの銀行や保険会社が本社を置いています。

社会と文化

ノヴィ・サドは、19世紀には「セルビアのアテネ」と呼ばれたセルビア文化の中心地でした。現在もセルビア第二の文化都市として、多くの文化施設、芸術イベントが開催されています。EXITフェスティバルは国際的に有名な音楽フェスティバルです。また、多くの博物館や美術館、劇場、図書館、出版機関があります。

教育

ノヴィ・サドは高等教育と研究の拠点であり、ノヴィ・サド大学など多くの高等教育機関があります。多くの初等・中等学校もあります。

観光

ペトロヴァラディン要塞、旧市街、フルシュカ・ゴーラ国立公園などは、ノヴィ・サドの主要な観光スポットです。EXITフェスティバルは、多くの観光客を呼び込んでいます。

スポーツ

ノヴィ・サドは、セルビアでベオグラードに次ぐスポーツ都市です。サッカーが特に人気があり、多くのスポーツクラブがあります。また、様々な国際的なスポーツイベントが開催されています。

レジャーとレクリエーション

市民は様々なレジャー活動を楽しんでいます。サッカー、バスケットボール、サイクリングなどが人気です。フルシュカ・ゴーラ国立公園は近郊のレクリエーションエリアとなっています。

交通

ノヴィ・サドは、道路、鉄道、河川港が整備されています。ベオグラード空港も比較的近いです。市内交通はバスが中心です。かつては路面電車もありました。2024年11月1日にセルビア鉄道ノヴィ・サド駅で屋根崩落事故が発生し、死者が出ています。

もう一度検索