ヴォルスング

ヴォルスング：英雄譚の祖

ヴォルスングは、古エッダや『ヴォルスンガ・サガ』に登場する伝説的な英雄であり、オーディンの曾孫にあたります。彼の血を引く子孫たち、シグムンド、シンフィヨトリ、ヘルギ、そしてシグルズといった英雄たちも、数々の武勇伝を残しています。

生誕

ヴォルスングの父、レリルは子宝に恵まれないことを嘆き、妻と共に神々に祈りを捧げました。女神フリッグは彼らの願いを聞き入れ、オーディンに相談。オーディンはワルキューレであるフリョリーズを遣わし、彼女がカラスに姿を変えて運んだリンゴをレリルの妻が食べたことで、ようやく身ごもることができました。しかし、子は母の胎内に6年も留まり、父レリルは遠征先で病死してしまいます。ヴォルスングの母は、自らの死を予感し、帝王切開によってヴォルスングを誕生させました。出産後、母も亡くなり、ヴォルスングは孤児となりましたが、幼い頃から勇敢で強靭な肉体を持っていました。

フン族の王

ヴォルスングは父の跡を継ぎ、フン族（現在のドイツ）の王となります。成人すると、両親の元へリンゴを運んだフリョリーズと結婚し、長男シグムンドとその双子の妹シグニュー、そしてその他9人の息子をもうけました。ヴォルスング王は、武勇に優れ、一族を繁栄に導きました。

シゲイルとの対立と死

娘のシグニューは、ガウトランドの王シゲイルと結婚します。結婚の宴で、オーディンが木に突き刺した剣（後の聖剣グラム）を巡り、シゲイルとシグムンドが対立。シゲイルはこれを恨み、ヴォルスング一族を滅ぼそうと企みます。結婚から3ヶ月後、シゲイルはヴォルスングとその息子たちを自国へ招待し、宴の席で彼らを襲撃します。シグニューは夫の陰謀を父に告げ、帰国を促しましたが、ヴォルスングは敵に背を向けることを潔しとせず、シゲイルの軍勢と戦い、壮絶な戦死を遂げました。

ヴォルスング王の死は、一族の復讐劇の幕開けとなり、息子シグムンドや孫のシグルズによって、シゲイルは討たれることになります。ヴォルスング王の勇気と悲劇的な最期は、北欧の英雄譚として語り継がれています。

ヴォルスング一族の系譜は複雑であり、多くの英雄が登場します。

ヴォルスング
レリル
シグムンド
シンフィヨトリ
ヘルギ
シグルズ

これらの英雄たちの活躍は、北欧神話の中でも特に人気が高く、多くの文学作品や芸術作品に影響を与えています。

参考文献

V.G.ネッケル他編『エッダ　古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、1973年。
『アイスランドサガ』谷口幸男訳、新潮社、1979年。
* 山室静『北欧文学ノート』東海大学出版会、1985年。

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