ヴォルトゥルノ川

ヴォルトゥルノ川は、イタリア半島南部を流れる主要な河川の一つで、アペニン山脈にその源を発し、ティレニア海へと注ぎます。カンパニア州北部の肥沃な大地を潤し、カプアなどの歴史ある都市が川沿いに発展してきました。この川は、その地理的な位置から、過去に幾度となく戦いの舞台となってきた歴史を持っています。

名称の由来

古代ローマ時代には「ヴォルトゥルヌス川」（Volturnus fl.）として知られていました。この名称は、ラテン語の動詞「volvere」（英語の「roll」に相当）に由来し、川の流れる様子を表していると考えられています。

地理

ヴォルトゥルノ川は、モリーゼ州イゼルニア県のカステル・サン・ヴィンチェンツォ付近の中央アペニン山脈に源を発します。そこから南へと流れ、ヴェナフロの南東で南東方向に転じ、カンパニア州カゼルタ県に入ります。カイアッツォの東でカローレ・イルピノ川と合流し、西へと大きく向きを変えます。この付近では、川がベネヴェント県との県境を形成しています。

その後、ヴォルトゥルノ川はカプアを通過し、カステル・ヴォルトゥルノ（ナポリの北西約35km）でティレニア海に流れ込みます。全長は約175kmです。河口左岸には「オアシ・ディ・カステルヴォルトゥルノ」という湿地帯が広がっており、オオフラミンゴやコオバシギ、メジロガモなど、多様な水鳥が生息しています。この地域は、2003年にラムサール条約登録地として登録されました。

歴史的意義

ヴォルトゥルノ川は、古代から軍事的な重要性が注目されてきました。紀元前194年には、ローマ人によって河口南岸に植民市ヴォルトゥルヌムが建設されました（現在のカステル・ヴォルトゥルノ）。この街は、シヌエッサ（現在のモンドラゴーネ）とプテオリ（現在のポッツオーリ）を結ぶ重要な街道であるドミティアナ街道が川を渡る地点に位置していました。

中世のゴート戦争（554年）では、東ローマ帝国の将軍ナルセスが、ヴォルトゥルノ川の戦いでフランク人とアラマンニ人の連合軍を破りました。

19世紀には、イタリア統一戦争において、ヴォルトゥルノ川が重要な舞台となりました。1860年、ジュゼッペ・ガリバルディ率いる義勇兵「千人隊」が南イタリアに進攻した際、両シチリア王国の軍隊は、サンタ・マリーア・カープア・ヴェーテレを中心にヴォルトゥルノ川南岸に防衛線を築きました。10月1日から2日にかけて行われたヴォルトゥルノの戦いで、サルデーニャ王国軍やガリバルディ軍は両シチリア王国軍を破り、カプアの攻略を決定づけました。

さらに、第二次世界大戦中には、ドイツ軍がこの地域に防衛線「ヴォルトゥルノ線」を敷設しました。このように、ヴォルトゥルノ川は歴史の中で何度も重要な役割を果たしてきました。

ヴォルトゥルノ川は、単なる地理的な特徴としてだけでなく、その歴史的、文化的、生態学的な側面から見ても、イタリア南部の重要な要素であると言えるでしょう。

参照情報

この記事は、1911年に出版された「ブリタニカ百科事典」11版からの情報を含んでいます。この百科事典の内容は、現在パブリックドメインとなっています。
外部リンクには、古代の地理情報を収集した「Pleiades」のヴォルトゥルノ川に関するページがあります。

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