ヴォルビリス

ヴォルビリス：古代ローマ都市の繁栄と衰退

ヴォルビリスは、モロッコに位置する古代ローマ都市の遺跡であり、フェズとラバトの中間に位置し、メクネスに近い場所にあります。その保存状態の良さから、北アフリカにおける古代ローマ都市遺跡の中でも特筆され、ユネスコの世界遺産に登録されています。

都市の起源と繁栄

ヴォルビリスは、紀元前3世紀に遡るカルタゴの施設群の上に、西暦40年頃にマウレタニアの王プトレマイオスが暗殺された後、ローマ帝国によって建造されました。都市の名前は、この地域に自生するキョウチクトウ（ベルベル語でAlili）に由来します。

マウレタニア・ティンギタナの中心都市として、ヴォルビリスは肥沃な土地から小麦やオリーブオイルを産出し、ローマ帝国へと輸出することで繁栄を築きました。217年には、カラカラ帝の恩恵に感謝を示すために「カラカラ帝の凱旋門」が建設されました。この凱旋門は、都市の繁栄を象徴する建造物として、今もその一部が残っています。

ローマ帝国の衰退と都市の変化

3世紀末、ローマ帝国はモロッコの大部分から撤退しましたが、ヴォルビリスは他のローマ都市とは異なり、放棄されることはありませんでした。しかし、ローマの撤退は都市の生活様式に大きな変化をもたらしました。水道橋の維持が滞り、住民は水を求めて高地から川沿いの低地へと移り住みました。また、4世紀後半には大地震が発生し、都市は壊滅的な被害を受けたとされています。

中世以降のヴォルビリス

6世紀になると、ヴォルビリスには再び人が住み始め、当時の墓石にはラテン語の碑文が刻まれ、キリスト教徒の共同体が存在していたことが示唆されています。しかし、7世紀にはイスラム勢力が北アフリカを席巻し、681年にはヴォルビリスもアッバース朝の支配下に入りました。

789年には、イドリース朝の創始者であるイドリース1世がアッバース朝の迫害から逃れてこの地に落ち着きました。イドリース2世によってフェズが建設されると、ヴォルビリスの重要性は徐々に失われていきました。

遺跡の発見と発掘

都市の遺跡群は、1755年のリスボン大地震によって大きな被害を受けました。また、メクネスの建築資材として大理石が持ち去られるなど、破壊が進みました。しかし、1915年にフランスの調査団によって発掘が開始され、広範囲にわたるローマ都市遺跡群が発見されました。2000年からは、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンとモロッコ国立考古遺産研究所の共同調査団による発掘調査が行われ、イドリース1世の拠点と考えられる遺構も発見されています。

主要な建造物

ヴォルビリスには、バシリカ、公衆浴場、ユピテル神殿、カラカラ帝の凱旋門など、当時の繁栄を物語る建造物が残っています。特に、美しいモザイク画は必見です。また、オリーブオイルの圧搾施設や穀物庫など、当時の生活を垣間見ることができる施設も残されています。

世界遺産としての価値

ヴォルビリスは、以下の理由からユネスコの世界遺産に登録されています。

建築、技術、都市計画の発展における人類の価値の重要な交流を示す
消滅した文化的伝統または文明の稀な証拠
人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積
普遍的な意義を有する出来事、伝統、思想、信仰と直接的または明白に関連する

ヴォルビリスは、古代ローマ帝国の繁栄と衰退、そしてその後の歴史的変遷を物語る貴重な遺跡です。訪れる人々は、古代の都市の息吹を感じ、歴史のロマンに浸ることができるでしょう。

もう一度検索