一つの花

一つの花

『一つの花』は、今西祐行が昭和28年に発表した児童文学作品です。平成元年以降、小学校の教科書に掲載され続けており、広く親しまれています。

あらすじ

物語は、幼い少女・ゆみ子の「一つだけちょうだい」という口癖から始まります。時代は戦争中で、食料が不足しており、両親はゆみ子に満足に食べさせてあげることができませんでした。そのため、「一つだけ」と言い聞かせる日々を送っていました。

ある日、ゆみ子の父に召集令状が届き、出征することになります。見送りの日、ゆみ子は父の鞄に入ったおにぎり（母が貴重な米で作ったもの）に気づき、「おにぎり一つちょうだい」と何度もねだります。父は困りながらも、最後には道端に咲いていた一輪のコスモスの花を摘み、「一つだけあげよう」とゆみ子に渡します。父はその後、帰ってくることはありませんでした。

10年後、ゆみ子は母と二人暮らしで、家の手伝いをするしっかり者の女の子に成長していました。家の庭にはたくさんのコスモスの花が咲いています。

登場人物

ゆみ子: 本作の主人公。戦時下の食糧難で常に空腹を抱えており、「一つだけちょうだい」が口癖。10年後には、母と暮らし、家事を手伝うしっかり者になります。
お父さん: ゆみ子の父。出征することになり、ゆみ子にコスモスの花を渡します。戦死したと思われます。
お母さん: ゆみ子の母。ゆみ子に「一つだけね」と言い聞かせるのが口癖。娘に十分な食事を与えられないことを心苦しく思っています。

作品のテーマ

『一つの花』は、戦時下における家族の愛情や別れ、そして希望を描いた作品です。「一つだけ」という言葉には、物資不足の中で生きる人々の切実な願いが込められています。また、コスモスの花は、父の愛情と平和への願いを象徴していると言えるでしょう。10年後のゆみ子の成長した姿は、困難な時代を生き抜く人々の強さを表しています。

教材としての『一つの花』

『一つの花』は、小学校の教科書に掲載されていることから、多くの日本人が触れる機会のある作品です。戦争の悲惨さや平和の尊さを学ぶ教材として、重要な役割を果たしています。また、家族愛や希望といった普遍的なテーマは、時代を超えて人々の心に響きます。

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