今西祐行

今西祐行について

今西祐行（いまにし すけゆき、1923年10月28日 - 2004年12月21日）は、児童文学の分野で卓越した才能を発揮した日本の作家です。彼は、大阪府中河内郡縄手村（現在の東大阪市六万寺町）に生まれ、奈良県の生駒市で育ちました。その文学的な感受性は、若い頃からの経験や読書に影響を受けて形成されていきました。

今西は、1936年に奈良中学校に入学し、5年間という学生生活を植物採集やテニスで楽しんだ後、1940年には病気により大阪の病院に入院しました。この入院生活の中で、彼は文学書を大量に読むことになり、これが彼の文学的な道を開くきっかけとなりました。

1941年には、第二早稲田高等学院に入学し、同年にはクリスチャンとしての信仰も深めます。この頃に、盆田譲治に出会い、早稲田大学の童話会に参加。1942年には最初の童話『ハコちゃん』を発表し、それが好評を得ましたが、同時に特別高等警察による検閲を受け、抹消される運命にありました。

1943年、学徒出陣で海兵団に入ることになりますが、これをきっかけに後の作品群には戦争の爪痕が広がります。具体的には、原子爆弾の投下後に広島に救援に向かい、その経験が『あるハンノキの話』、『ヒロシマのうた』、『ゆみ子とつばめのおはか』などの作品に反映されています。

1947年に早稲田大学を卒業後、国民図書刊行会に勤務し、1949年には結婚。その後は多くの出版社で編集者として働き続けましたが、1956年に初めての童話集『そらのひつじかい』を発表し、児童文学者協会新人賞を受賞。しかし、その受賞は彼の作家としての旅の始まりに過ぎませんでした。

以降、彼は数々の名作を生み出し、1965年には『肥後の石工』が日本児童文学者協会賞や国際アンデルセン賞国内賞を受賞。1969年には『浦上の旅人たち』で野間児童文芸賞を受賞し、1981年や1986年にはそれぞれ文学賞を受けるなど、その評価は年々高まっていきました。

1987年には、藤野町で「菅井農業小学校」を開き、「人間の本当の仕事は自然の本当の実のりを待って耕すこと」との考え方を基にした教育にも力を注ぎました。

彼の代表作としては『ヒロシマの歌』や『一つの花』、『マタルペシュペ物語』などがあり、1990年代も多くの作品を発表しました。2004年12月21日、心不全により亡くなるまで、彼の文学は新たな世代に影響を与え続けました。

彼の作品は、全15巻の『今西祐行全集』としてまとめられ、後世に残されています。今西祐行は、単なる児童文学作家としてだけでなく、子供たちへの愛情や自然を大切にする心を育むための偉大な教育者としても記憶されています。

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