一宮市立図書館

一宮市立図書館は、愛知県一宮市にある公共図書館の総称です。1915年（大正4年）に一宮町立図書館として開館し、2005年（平成17年）に旧一宮市、尾西市、葉栗郡木曽川町の2市1町が合併して新一宮市が誕生してからは、中央図書館、尾西図書館、玉堂記念木曽川図書館、尾西児童図書館の4図書館に加え、子ども文化広場図書館（図書館類似施設）、移動図書館からなります。2015年（平成27年）には100周年を迎えました。

中央図書館

歴史

高等女学校時代(1915-1931)

近世の一宮は真清田神社の門前町として栄え、「三八市」と呼ばれる市場では綿織物や絹織物などの繊維製品が取引されていました。1915年（大正4年）には、大正天皇御大典記念事業として、一宮町会は図書館を設置することを決定しました。12月24日には館則が制定され、愛知県知事の認可を受けました。この頃の資料は不足しているため、実際の開館日は不明ですが、12月24日が創立記念日とされています。

開館当初は、一宮高等女学校（現・愛知県立一宮高校）の仮校舎を間借りし、「書棚二つに充つる程度」の貧弱な施設で、利用者は高等女学校の職員に限定されていました。開館時間も高等女学校のカレンダーに左右されていました。同時期には名古屋市にも複数の簡易図書館が開館し、愛知県下では武豊町立図書館や刈谷町立刈谷図書館などが開館しています。また、一宮町内の小学校には児童文庫が設置され、今日の学校図書館の源流となっています。

1916年から1930年までの予算は年間1,100円から500円程度で、図書購入費は年によって30円から510円程度でした。1919年には『帝国地名大辞典』の寄贈を受けました。1921年9月1日には一宮町が市制施行して一宮市となり、図書館は市立一宮図書館に改称しました。

市役所付属建物時代(1931-1944)

1931年8月15日には、一宮市役所が新庁舎に移転し、図書館も市庁舎附属建物の一部に移転しました。この時の市庁舎は「東海随一」と称されました。図書館は閲覧室、児童室、事務室の3部屋に区切られ、移転を機に一宮市立図書館に改称されました。館長には一宮市役所第三課長が就任し、移転時の蔵書数は2,614冊でした。

移転後には著名人の講演会や万葉集の講座が開催されました。1931年の閲覧人数は1日平均大人49.6人、児童101.1人でしたが、1940年には大人90.7人、児童99.5人に増加しました。大人の閲覧者は新聞や雑誌、小説などを読んでいました。入館者の大半は中等学校の生徒で、昼時には図書館近くの駄菓子屋が繁盛していました。当時の一宮市立図書館は「読みたい本が全然ない」と評されたこともありました。1934年には市民からブリタニカ百科事典が寄贈されました。1937年以降には真清田神社近くへの移転計画が立てられましたが、太平洋戦争の影響で立ち消えとなりました。

太平洋戦争勃発後、多くの図書館が予算削減される中、一宮市立図書館は比較的優遇されました。1939年の予算は約2,500円でしたが、1944年には7,054円に増額されました。蔵書数も1936年の6,896冊から1943年には12,537冊に増加しました。1942年には館長が交代し、一宮市長が兼任しました。

放浪期(1944-1952)

1945年の一宮空襲により、図書館付近も大きな被害を受けました。図書館は商工会議所、借家、熊沢女学校、大志小学校、熊沢保育園と、8年間で仮館を転々とする放浪期を過ごしました。

1944年3月1日、一宮市立図書館は商工会議所へ移転しましたが、1945年2月には個人宅に移転しました。本土空襲が激化すると図書疎開が行われましたが、疎開しなかった書籍は空襲で焼失しました。重要書類は地下室に避難したため焼失を免れました。1945年11月15日には熊沢女学校の2階を仮館として再開し、1日平均約50人の閲覧者がありました。戦後には軍事や日本精神をうたった本が焼却処分されました。連合国軍最高司令部(GHQ)の命令で国家主義的図書が没収され、戦中戦後の混乱期に約8,000冊の書籍を失いました。

1947年4月には大志小学校へ移転し、1948年9月末頃には熊沢保育園へ移転しました。1949年から1952年にかけて、図書館は「ショパン鑑賞会」や「ゲーテ講演会」などの文化事業を主催しました。1950年に図書館法が制定されると、図書の閲覧料金制度が撤廃されました。

大宮町時代(1952-1966)

1952年5月8日、図書館は体育館に併設された建物に移転しました。当初は1階のみでしたが、後に2階も閲覧室となりました。1953年頃には21時までの開館時間が好評でしたが、1956年には18時までに短縮されました。当時は入館券の提出が必要で、学生の利用が最も多く、次いで団体、実業、公務員、家庭婦人、児童、教員宗教家が利用していました。1948年度の蔵書数は7,181冊でしたが、1958年度には28,399冊に増加しました。

1956年には森春濤の詩碑が移設され、記念遺墨展と講演会が開催されました。田中新男が専任館長に就任し、同年中には平松稔が館長を兼任しました。平松は図書館法に則った一宮市立図書館設置条例を制定しました。1957年には入山仙一が専任館長となり、開架室や児童室を設置しました。1961年には児童閲覧室が設置され、一部書籍が開架式となりました。

1957年には団体貸出制度が設けられ、青年団や婦人会などが利用しました。1964年には森徳一郎から蔵書の寄贈を受けました。長谷川正が専任館長に就任し、1952年の図書館費182万2845円は、1965年には805万円に増加しました。

大宮町時代の建物は、通風や採光に問題があり、夏季は蒸し風呂、冬季は冷蔵庫のようでした。体育館の行事や参拝客の騒音もありました。閲覧室で高校生が異性と愛を育む場所として利用することがあったため、1964年には閲覧室が男女別席となりました。

豊島図書館(1966-2013)

1966年4月6日、一宮市立豊島図書館が開館しました。利用者中心の設計が評価され、近隣自治体からの視察が相次ぎました。1970年には一宮市児童文化センターが併設され、1980年には豊島図書館別館となりました。1989年度のコンピュータ導入後の10年間で貸出者数は倍増しました。

1999年時点では、蔵書約39万冊のうち開架は約10万冊に過ぎず、エレベーターがないため車いすの利用者が不便でした。近隣の図書館は広域利用を認めていましたが、一宮市は体制不足から広域利用を行えませんでした。2005年には旧一宮市・尾西市・木曽川町が合併して新一宮市が誕生し、人口が増加しました。同時に広域貸出を新稲沢市にも拡大しました。2007年3月、一宮市は尾張一宮駅ビルへの移転を視野に入れた新図書館の基本計画を策定しました。

中央図書館(2013-)

2008年には広域貸出が拡大され、2012年10月1日には図書館流通センター(TRC)が運営業務の委託者となり、貸出カード作成時の居住地制限が撤廃されました。2013年1月10日には尾張一宮駅前ビル内に一宮市立中央図書館が開館しました。鉄道駅と一体になったビルに大規模な公立図書館が入居することは全国的に見ても珍しいとされています。開館から3か月で30万人以上の入館者があり、図書貸出冊数も旧館時代から大幅に増加しました。

駅ビル開館により、名鉄百貨店や商業施設にも来店客数が増加しました。2015年12月24日には、一宮町立図書館の館則成立から100周年を迎え、記念式典が開催されました。2016年4月には大成株式会社が尾張一宮駅前ビルの指定管理者となりました。

特色

豊島図書館時代

豊島図書館は鉄筋コンクリート造3階建（一部4階建）で、延床面積は2,320m2でした。開館当初の蔵書数は約54,000冊で、開架は約6,900冊でした。特徴としては、開架式閲覧室、個人研究室（後に消滅）、男女別閲覧室、ロッカー、電動式書庫などがありました。児童室は設置されておらず、児童向け図書は学校図書館に委ねられていました。

中央図書館時代

中央図書館は尾張一宮駅前ビルの5階から7階にあり、図書館部分の延床面積は6,701.67m2と、豊島図書館時代の約3倍になりました。5階は児童フロアで、約47,000冊の絵本や児童書が置かれています。「おはなしのへや」や子ども向け学習室も設置されています。開館時間は9時から21時までで、年間の開館日数も旧館時代よりも約40日間多い約320日となりました。

6階は文芸書が中心で、新聞・雑誌コーナー、学習室、ブラウジングコーナーなどが設置されています。「郷土人コーナー」では一宮ゆかりの著名人の著作を集めています。7階は参考業務を想定したフロアで、郷土資料、繊維関連資料、ビジネス支援コーナーなどが設置されています。屋上には自動化書庫があります。また、館内には対面朗読室があり、ボランティアが常駐しています。開館時にはブロンズ像「そよ風」が寄贈されました。

分館

尾西図書館

歴史

1956年4月に旧起町役場の一角に尾西市立図書館が開館しました。1962年12月には尾西市文化会館（現・生涯学習センター西館）に移転し、1971年4月には1階に移転し、本格的な館外貸出を開始しました。1981年10月24日に新館が開館し、1983年4月には尾西市児童図書館が分館として位置づけられました。2005年には新一宮市が発足したため、一宮市立尾西図書館に改称されました。

玉堂記念木曽川図書館

歴史

木曽川町には約2万冊の蔵書を持つ中央公民館図書室がありました。2001年4月に木曽川町立図書館が開館し、開館時から広域貸出を行っていました。2004年には玉堂美術館からの承諾を受け、玉堂記念木曽川図書館に改称しました。2005年には新一宮市が発足したため、一宮市立玉堂記念木曽川図書館に改称されました。

尾西児童図書館

歴史

1980年4月に尾西市児童図書館が開館しました。総工費は9675万7000円で、2階建ての建物で、1階は児童館、2階が児童図書館でした。1982年1月に館外貸出を開始し、1983年4月には尾西市立図書館の分館となりました。1986年10月にはコンピュータで結ばれ、貸出点数が拡大されました。1999年末時点の蔵書数は33,366冊で、2005年に新一宮市が発足したため、一宮市立尾西児童図書館に改称されました。2021年3月31日に閉館しました。

子ども文化広場図書館

豊島図書館の駐車場不足や書架不足から、2003年に子ども文化広場図書館が開館しました。利用者は高校生以下に限定されています。2012年には子ども読書活動優秀実践図書館として文部科学大臣表彰を受けました。

移動図書館

1980年10月には移動図書館「ほたる号」の運行を開始しました。2010年4月には3代目「ほたる号」に更新され、図書館から2km以上離れた場所を中心に、39か所のステーションを巡回しています。

基礎情報

一覧

中央図書館と子ども文化広場図書館は旧一宮市域に、尾西図書館と尾西児童図書館は旧尾西市域に、玉堂記念木曽川図書館は旧木曽川町域にあります。

沿革

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脚注

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注釈

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出典

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参考文献

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