一宮藩

一宮藩の概要と歴史

一宮藩（いちのみやはん）は、江戸時代後期において存在した藩で、上総国長柄郡に位置する一宮陣屋を藩庁としていました。この藩は、1826年に伊勢国八田藩の加納久儔によって設立され、以後、約50年間にわたって譜代大名の加納家が治めました。その石高は1万3000石でした。

一宮藩の成立に至る背景

戦国時代のこの地域には一宮城が存在し、北条氏と里見氏の勢力圏の交差する場所に位置していました。城はしばしば支配者が変わる運命にありましたが、小田原征伐時には本多忠勝によって攻め落とされ、その後廃城となりました。時が経つにつれ、大多喜藩領を経て、伊勢国八田藩の加納家の飛び地領となったのです。

加納家は紀州徳川家の家臣として歴史を刻んできた家系であり、徳川吉宗が将軍に就任した際に紀州から東京に転居して幕臣となりました。これにより、彼らは大名としての地位を確立しました。

藩主と藩政改革

1826年、加納久儔が陣屋を一宮城跡地に移すことで、一宮藩が正式に成立しました。初代藩主の久儔は、天保期に藩政改革を推進し、軍制改革や農民徴兵制の施行などを行いました。この改革には一定の成功が見られ、後の第2代藩主・加納久徴が1855年には講武所の総裁に任命されています。

第2代藩主の久徴は、奏者番や若年寄を歴任し、公武合体運動にも尽力しました。1863年には真忠組の乱が勃発し、その鎮圧で功を挙げています。

最後の藩主と廃藩置県

第3代藩主の加納久恒は1867年に若くして亡くなり、その後を受け継いだ第4代藩主・加納久宜は戊辰戦争の際、新政府側に加担しました。久宜は1869年の版籍奉還で知藩事となり、1871年の廃藩置県によって一宮藩は一宮県に改編されました。その後、木更津県を経て現在の千葉県に編入されました。

藩主だった加納久宜（のちの子爵）は明治維新後も政界で活躍し、鹿児島県知事を務めた後、一宮町長になりました。また、彼の子供である加納久朗も千葉県知事を務めました。興味深いことに、彼の親族には後に内閣総理大臣となる麻生太郎の祖母が含まれています。

現在の一宮藩の跡地

現在、一宮陣屋跡には大手門の模擬門が残るのみで、当時の面影をうかがえるのはこの場所だけとなっています。

歴代藩主

一宮藩を治めた歴代藩主は加納家に属し、すべて譜代大名としての地位を有していました。具体的には、以下のようになります：

• - 加納久儔（従五位下 遠江守）
• - 加納久徴（従五位下 駿河守）
• - 加納久恒（従五位下 大和守）
• - 加納久宜（従五位下 遠江守）

領地の変遷

一宮藩の領地は、幕末期には上総国の長柄郡や下総国の相馬郡、上野国、伊勢国の各郡にわたりました。しかし、領地の配分については複雑で、記録に頼れば正確性は薄い部分もあります。このように、一宮藩は短い歴史の中で多くの変遷を経て、最終的には千葉県の一部としてその名を残しています。

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