一条さゆり 濡れた欲情

映画『一条さゆり 濡れた欲情』について

『一条さゆり 濡れた欲情』は、1972年10月に公開された神代辰巳監督の日活制作の映画で、ロマンポルノのジャンルで高く評価されています。公開当初から賛否を呼び、特にストリップの女王として名を馳せた一条さゆりの名が冠された作品です。この映画は、1972年度のキネマ旬報日本映画ベストテン8位、映画芸術ベストテン2位に選出され、神代辰巳監督や主演の伊佐山ひろ子も多数の賞を受賞しました。特にこの作品は、ストリップの舞台裏に潜む人間の欲望や葛藤を真に迫って描き出しており、社会現象ともなった作品です。

あらすじ

物語は、うだるような夏の日、ストリッパーのはるみ（伊佐山ひろ子）が通称「ヒモ」と一緒に登場する場面から始まります。彼女のヒモの男はストリップ舞台での成功を支えながらも、元ヒモの大吉（粟津號）の出所日と重なっています。はるみは新旧のヒモの間で揺れ動く心情を抱え、元ヒモとの再会によって微妙な葛藤が生まれます。はるみは大阪の吉野ミュージックで再度舞台に立つことになり、ストリップの女王、一条さゆりに対して嫉妬心を抱きます。

彼女は、一条さゆりに対抗意識から小さな嫌がらせを繰り返し、一見無邪気なふりをしながらも、彼女の地位を奪おうと画策します。しかし一条さゆりの引退が決まり、彼女の舞台が盛り上がる中、はるみは不安を抱えるものの、自身の道を突き進む決意を固めます。彼女たちの間で繰り広げられる人間ドラマは、ストリップという特殊な世界を背景に、欲望、嫉妬、愛情が絡み合います。

制作の背景

1970年代初頭、日本の映画界は経営難に苦しみ、日活も例外ではありませんでした。このような状況下で大々的に始まったロマンポルノは、低予算・短期間で制作される映画の新たな形を模索していました。この新たなジャンルの確立に寄与したのが神代辰巳で、その作品は既存の映画に新しい風を吹き込むものでした。

評価と影響

公開後、『一条さゆり 濡れた欲情』は大ヒットを記録し、日活ロマンポルノの社会的認知を高めました。この映画は多くの批評家からも高評価を受け、特に神代辰巳の監督力や、女優伊佐山ひろ子の演技が称賛されました。作品は純粋なエンタテインメントを超え、人間存在の本質に迫ろうとする試みが感じられ、観客に強烈な印象を残しました。

また、映画内で描かれるストリッパーたちのリアルな描写や、欲望と日常の葛藤は、時代を超えた普遍的なテーマとして多くの人々に共感を呼びました。

結論

『一条さゆり 濡れた欲情』は、単なるポルノ映画に留まらず、社会の裏側に生きる人々の心情を描き出した作品であり、ロマンポルノの金字塔として名を残しました。その作品は、ただのエロティックな表現ではなく、登場人物たちの生きざまを通して、人間の根源的な欲望を浮き彫りにするものであり、映画史における重要な位置を占めています。

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