七つの悲しみの多翼祭壇画

『七つの悲しみの多翼祭壇画』は、アルブレヒト・デューラーによって制作された油彩の多翼祭壇画です。元々は一つの作品でしたが、16世紀に解体され、現在は各パネルが別々の美術館に所蔵されています。中央パネルの『悲しみの聖母』は、ミュンヘンのアルテ・ピナコテークに、周囲の7枚のパネルはドレスデンのアルテ・マイスター絵画館に展示されています。

主題

この祭壇画の主題は、「聖母の七つの悲しみ」です。これは、聖母マリアがイエス・キリストの生涯の中で経験した七つの悲劇的な出来事を描いたもので、具体的には以下の場面が含まれます。

1. 割礼: イエス・キリストが割礼を受ける場面。
2. エジプトへの逃避: ヘロデ王の迫害を逃れてエジプトへ逃れる場面。
3. 博士たちの間のキリスト: 幼いイエスがエルサレムの神殿で律法学者たちと議論する場面。
4. 十字架を担うキリスト: イエスが十字架を背負ってゴルゴダの丘へ向かう場面。
5. 十字架に付けられるキリスト: イエスが十字架に磔刑にされる場面。
6. 磔刑: 十字架上で息絶えるイエスの姿を描いた場面。
7. キリストの哀悼: 十字架から降ろされたイエスの遺体を聖母マリアが抱き悲しむ場面。

これらの場面は、伝統的な図像に従って描かれており、聖母マリアの深い悲しみを表現しています。

この祭壇画は、「聖母の七つの喜び」を描いた作品と対になっていたと考えられており、エアランゲン大学図書館にはクラナッハ工房による模写素描が残っています。

解説

この祭壇画は、1496年にザクセン選帝侯フリードリヒ3世（賢公）がデューラーに依頼したと考えられています。しかし、制作時期については、中央パネルの『悲しみの聖母』の完成度の高さや、周辺パネルの構図の精巧さから、1498年頃に制作されたとする説が有力です。

美術史家の間では、中央パネルはデューラー自身が制作し、周辺の7枚のパネルはデューラーの素描に基づいて弟子たちが制作したとする見方が一般的です。

中央パネルの『悲しみの聖母』は、19世紀初頭にベネディクトボイレン修道院からバイエルン美術館に収蔵され、1930年代に修復が行われました。修復の結果、後世の補筆が取り除かれ、右側の貝殻の形をした壁龕や、光輪と剣など、作品の主題を明確にする要素が発見されました。

周辺の7枚のパネルは、1640年にザクセン王子の美術室に移され、20世紀半ばに修復されました。保存状態は改善されましたが、作者の特定には至っていません。

7点の周辺パネル

以下は、ドレスデンのアルテ・マイスター絵画館に所蔵されている7点の周辺パネルです。

割礼
エジプトへの逃避
博士たちの間のキリスト
十字架を担うキリスト
十字架に付けられるキリスト
磔刑
キリストの哀悼

これらのパネルは、それぞれが独立した場面を描きながらも、全体として聖母マリアの七つの悲しみを表現する重要な要素となっています。

参考文献

Costantino Porcu, ed (2004). Dürer. Milan: Rizzoli
K. Niehr, ‘Dürer’s Bild der Sieben Schmerzen Mariens und die Bedeutung der retrospektiven Form‘, in: Marburger Jahrbuch für Kunstwissenschaft, vol. 36, (2009), pp. 117 – 143.

外部リンク

アルテ・ピナコテークの本作 (悲しみの聖母) のサイト (英語) [9]
アルテ・マイスター絵画館の本作 (割礼) のサイト (ドイツ語) [10]
アルテ・マイスター絵画館の本作 (エジプトへの逃避) のサイト (ドイツ語) [11]
アルテ・マイスター絵画館の本作 (博士たちの間のキリスト) のサイト (ドイツ語) [12]
アルテ・マイスター絵画館の本作 (十字架を担うキリスト) のサイト (ドイツ語) [13]
アルテ・マイスター絵画館の本作 (十字架に付けられるキリスト) のサイト (ドイツ語) [14]
アルテ・マイスター絵画館の本作 (磔刑) のサイト (ドイツ語) [15]
* アルテ・マイスター絵画館の本作 (キリストの哀悼) のサイト (ドイツ語) [16]

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