七つの秘蹟の祭壇画

『七つの秘蹟の祭壇画』は、初期フランドル派の巨匠ロヒール・ファン・デル・ウェイデンとその工房によって制作された油彩の三連祭壇画です。1440年から1445年の間に、おそらくフランスのポリニーの教会のために制作されたと考えられていますが、美術史家のマックス・フリードレンダーは、トゥルネーの司教ジャン・シュヴロが依頼主であると主張しました。この作品は、1841年にフロレント・ファン・エルトボルンによってアントワープ王立美術館に寄贈され、現在もそこで鑑賞することができます。

この祭壇画の主題は、ローマ・カトリック教会の七つの秘蹟です。中央パネルには「聖体」の秘蹟が描かれており、磔刑にされたイエス・キリストを中心に、聖体拝領の様子が描かれています。左側のパネルには、「洗礼」、「堅信」、「ゆるし」の秘蹟が、右側のパネルには、「叙階」、「婚姻」、「病者の塗油」の秘蹟が描かれています。プロテスタントでは、「洗礼」と「聖体」の二つの秘蹟のみを認めているため、この祭壇画はカトリックの信仰を強く表していると言えます。初期ネーデルラント絵画において、七つの秘蹟は祭壇画の主題として人気があり、本作はその代表的な例の一つです。

中央パネルは、祭壇画の中でもファン・デル・ウェイデンの手による唯一の部分であると考えられています。ゴシック様式の大聖堂を背景に磔刑像が描かれており、これは教会のキリストへの従属を表していると考えられます。前景には「磔刑」が中心に描かれ、その背景には「聖体」の秘蹟が配置されています。中央パネルの登場人物は、左右の翼パネルの人物よりも大きく描かれており、その重要性が強調されています。特に、福音書記者聖ヨハネと、悲しみに打ちひしがれる3人のマリアの感情表現は、ファン・デル・ウェイデンの作品の特徴をよく表しています。

祭壇画全体では、各秘蹟の上を天使たちが巻物を持って飛翔しており、天使たちの服の色は、洗礼の白から病者の塗油の黒まで、それぞれの秘蹟に合わせて変化しています。左右の翼パネルには、祭壇画の依頼者たちが描かれており、中には作品が完成する直前に追加された人物も含まれています。左翼パネルには、堅信の秘蹟を行う司教ジャン・シュヴロが描かれており、彼の肖像は実際の人物をモデルに、初めは錫の薄い小片に描かれ、後に画面に貼り付けられました。

また、内側の額縁の三角小間には、二つの盾型紋章が描かれています。一つは、依頼者であるジャン・シュヴロの紋章であり、金色の草原上の漆黒山形紋が描かれています。もう一つは、彼が司教を務めたトゥルネーの紋章であり、漆黒の草原上の銀色の塔が描かれています。これらの紋章は、この祭壇画の歴史的背景と依頼者との関連性を示しています。

この祭壇画は、ファン・デル・ウェイデンの卓越した技術と、宗教的な深い意味を兼ね備えた傑作です。細部に至るまで丁寧に描かれた人物や、感情豊かな表現は見る者を魅了し、初期ネーデルラント絵画の重要な作品として、今日でも多くの人々に愛されています。

この祭壇画は、カトリック教会の七つの秘蹟というテーマを通じて、人間の人生における重要な出来事と、神の恩恵を表現しています。また、依頼者であるジャン・シュヴロの存在は、当時の社会情勢や宗教的背景を理解する上で重要な手がかりとなります。

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