七十子

七十子：孔子の優れた弟子たち

孔子の弟子には三千人もの人がいたと伝えられていますが、その中でも特に優れた70名余りの弟子を「七十子（しちじっし）」と呼びます。この呼称は『孟子』に登場しますが、『史記』や『孔子家語』といった文献にも、孔子の優れた弟子に関する記述があり、それぞれ七十子の人数や構成メンバーに若干の違いが見られます。

『史記』「仲尼弟子列伝」では、孔子が「業を受けて身の通ずる者」として77人の弟子を列挙しており、その中には顔回、子貢、子路、子夏といった有名な人物が含まれています。一方、『孔子家語』「七十二弟子解」では76人の弟子が挙げられており、『史記』と完全に一致するわけではありません。両者の記述には、名前の表記の違いや、どちらか一方のみに登場する人物も存在します。例えば、『史記』に登場する「后処」は、『孔子家語』では「石処」と表記されているなど、わずかな差異が見られます。また、『孔子家語』にのみ登場する人物として、琴牢、陳亢、郻亶などが挙げられます。

七十子の人物像については、史料によって記述の内容や解釈に違いが見られます。全ての七十子について詳細な事績が記録されているわけではなく、その人物像が明らかになっているのは全体の半分程度と言われています。

孔子の弟子たちの能力を評価する基準として、論語では「徳行」「言語」「政事」「文学」の4分野（孔門四科）が挙げられており、特に優れた10人の弟子が『論語』先進篇で紹介されています。この10人を「孔門十哲」と呼び、七十子の中からも選出されています。孔門十哲は、孔子の思想を継承し、後世に大きな影響を与えた弟子たちとして知られています。

七十子に名を連ねた弟子たちは、それぞれ異なる才能や特質を持っていました。顔回は、孔子の教えを忠実に守り、質素な生活を送ったことで知られています。子貢は、弁舌が巧みで、外交交渉などで活躍しました。子路は、勇猛果敢な性格で、政治活動に携わりました。子夏は、学問に秀で、教育者として多くの弟子を育成しました。このように、七十子には、政治、経済、教育など様々な分野で活躍した人材が揃っていました。

しかし、七十子の人数や構成メンバーについて、複数の史料に食い違いがあることからもわかるように、その実像は必ずしも明確ではありません。それぞれの文献の記述を丁寧に比較検討することで、より正確な七十子の姿が見えてくるかもしれません。七十子に関する研究は、孔子の思想や弟子たちの活躍を知る上で重要な手がかりとなります。

仲尼弟子列伝に挙げられた77人の一覧

以下に『史記』「仲尼弟子列伝」に挙げられた77人の弟子を列挙します。それぞれの弟子について、詳細な事績が記録されているわけではありませんが、一部の弟子については、その生涯や活躍などが知られています。

顔回、閔損、冉耕、冉雍、冉求、仲由、宰予、端木賜、言偃、卜商、顓孫師、曾参、澹台滅明、宓不斉、原憲、公冶長、南宮括、公皙哀、曾蒧、顔無繇、商瞿、高柴、漆雕開、公伯繚、司馬耕、樊須、有若、公西赤、巫馬施、梁鱣、顔幸、冉孺、曹卹、伯虔、公孫龍、冉季、公祖句茲、秦祖、漆雕哆、顔高、漆雕徒父、壌駟赤、商沢、石作蜀、任不斉、公良孺、后処、秦冉、公夏首、奚容蒧、公肩定、顔祖、鄡単、句井疆、罕父黒、秦商、申党、顔之仆、栄旂、郻成、左人郢、燕伋、鄭邦、秦非、施之常、顔噲、歩叔乗、原亢籍、楽欬、廉絜、叔仲会、顔何、狄黒、邦巽、孔忠、公西輿如、公西蒧

関連項目

孔子
孔門十哲

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