七去

七去（しちきょ）とその背景

七去（しちきょ）は、妻を離婚することが可能な七つの理由を示す言葉です。これは、古代の儒教的な思想を背景に持ち、特に中国の『礼記』の中の「大戴礼」に由来しています。日本では、奈良時代の養老律令の「戸令」において、離婚が認められる条件として「七出」が規定されており、この概念はその後江戸時代に『女大学』などの書物によって広まりました。

七去の七つの事由

「七去」に含まれる具体的な理由は以下の通りです：
1. 無子 - 子供がいないこと。
2. 淫迭 - 不貞行為や浮気をすること。
3. 不事舅姑 - 義理の父母に仕えないこと。
4. 口舌 - 多くを語り、家の方針について口を挟むこと。
5. 盗竊 - 家財を横領または無断で使用すること。
6. 妬忌 - 嫉妬や恨みを抱くこと。
7. 悪疫 - 家族に伝染する恐れのある病にかかること。

これらの事由のいずれかに該当する場合、夫は妻を離婚する権利を持つとされていました。また、場合によっては、妻に非があっても離婚が認められない「三不去」も存在します。これには、舅姑の喪に服している場合、結婚後に出世している場合、帰る場所がない場合などが含まれます。これは、時代背景や家族の価値観が強く影響した結果とも言えます。

歴史上の文献との関連

日本の古典である『万葉集』にも、七去に関連する表現が見られます。一例として、大伴家持が同僚の尾張少咋に妻を捨てようとする行動を諌めるために詠んだ歌が挙げられます。その歌の中には「七出」や「三不去」という語が登場し、当時の社会における男女の関係性や家族の重要性について示唆しています。

さらに、江戸時代の学者である貝原益軒は、『和俗童子訓』の中で「女子を教える法」として七去の教えを解説しました。この教えは後に『女大学』という書物に変わり、その後長い間女子教育に影響を与えました。

儒教と家族観

「七去」はもちろん、儒教的な価値観が色濃く反映されています。この時代の教えには、「三従」という言葉もあり、「生家では父に従い、嫁いだら夫に従い、最終的には子供に従う」といった家族内での従うべき立場を強調しています。この教えは、「家」を一個人よりも優先するという儒教の世界観を表しており、家族のつながりとその役割の重要性を強調しています。

離婚の手続き

離婚を行う際には「三行半」と呼ばれる離別状が書かれる慣習がありました。これは一種の形式であり、男女間の関係を正式に断つための手段として利用されていました。

このように、七去という概念は単なる離婚の理由を超え、当時の社会における家族観、社会的な価値観を深く考察する上で重要な要素と言えるでしょう。

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