七大恨

七大恨とは

七大恨（しちだいこん）は、17世紀初頭、後金の創始者ヌルハチが明朝に対して突きつけた七つの恨み、すなわち宣戦布告とも言える檄文です。満洲語では「nadan amba koro」と表記されます。この檄文は、ヌルハチが明との全面戦争に踏み切る上で、自らの行動を正当化し、民衆を鼓舞する重要な役割を果たしました。

七大恨の内容

天命3年（1618年）、ヌルハチは以下の七つの恨みを表明しました。これらの恨みは、明朝の数々の行為を非難し、後金が明と戦う理由を明確にするものでした。

1. 祖父と父の殺害: 明朝は正当な理由もなく、ヌルハチの祖父と父を殺害した。
2. 国境の侵犯: 明朝は、女真族との間で結ばれた国境を越えないという誓約を破った。
3. 使者の殺害: 明朝は、越境者を処刑したことへの報復として、後金の使者を殺害し、威嚇した。
4. 婚姻の妨害: 明朝は、後金とイェヘ族との婚姻を妨げ、イェヘ族の女性をモンゴルに嫁がせた。
5. 収穫の強奪: 明朝は、後金が耕作した土地からの収穫を認めず、軍隊を使って追い払った。
6. イェヘ族への偏重: 明朝は、後金よりもイェヘ族を信用し、後金を軽んじた。
7. イェヘ族の支援: 明朝は、天の意思に背き、イェヘ族を支援した。

七大恨の特徴と影響

七大恨の内容は、重複する部分も多く、必ずしも七つに分ける必要があったわけではありません。七という数字が縁起の良い数であることから、意図的に七つにまとめたという説もあります。この檄文は、ヌルハチの明への敵意を明確に示すと同時に、後金軍の士気を高め、明との戦いに突き進む原動力となりました。

七大恨が発表された後、ヌルハチは明との間でサルフの戦いを開始しました。この戦いは、後の清朝建国へと繋がる重要な戦いであり、七大恨は、その開戦の狼煙となったと言えるでしょう。

まとめ

七大恨は、単なる宣戦布告ではなく、ヌルハチの明への恨み、そして後金の独立への強い決意を表したものでした。この檄文は、後の歴史に大きな影響を与え、清朝建国へと繋がる重要な転換点となりました。

参考文献
* 石橋崇雄『大清帝国』講談社選書メチエ、2000年

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