万国正義院

万国正義院 (The Universal House of Justice)

万国正義院は、バハイ信教における最高位の管理運営機関です。世界中のバハイ信徒を代表する者たちの互選によって選ばれた9名のメンバーで構成されており、その任期は5年と定められています。本部はイスラエルのハイファ市にあるカルメル山に位置しています。

歴史的背景

万国正義院の設立の礎は、バハイ信教の開祖であるバハオラがその最も神聖な書『ケターベ・アクダス』の中で定められました。バハオラはこの書において、正義院の存在を規定し、その主要な機能を定義しました。機関の責任や権限に関する詳細は、バハオラの他の著作にも数多く記されています。これらの記述によれば、万国正義院は宗教に関する確固たる権威を有し、聖典に直接記されていない新たな問題や状況に対処する役割を担うとされています。また、メンバーは神の霊感に導かれ、すべての民族に敬意を払い、人々の尊厳を守る存在でなければならないことが示されています。

バハオラの死後、その後継者であるアブドル・バハは、自身の『意志と遺訓』の中で、万国正義院の構成と選挙の仕組みについて詳しく概説しました。彼は、万国正義院はバハオラの神聖な保護のもとにあり、その決定は誤りから守られるため、信徒はその決定に従う義務があると強調しました。アブドル・バハは、地域や国のレベルで設立される「精神行政会」と、最高機関としての「万国正義院」とを区別するために、この名称を初めて使用しました。さらに、万国正義院の決定は多数決または満場一致で行われることが望ましく、そのメンバーは各国の全国精神行政会の中から選ばれるだろうと述べました。

時代が進み、1951年には9つの全国精神行政会が設立される状況となり、当時の守護者ショーギ・エフェンディは「国際バハイ評議会」を任命し、これを将来の万国正義院の「胚」と位置づけました。1957年にショーギ・エフェンディが予期せず死去した後、バハイ信教の指導を一時的に担った「大業の翼成者」たちは、宗教事務の運営を引き継ぎました。彼らは、ショーギ・エフェンディが定めた国際的な普及計画である「十年改革運動」が終了する1963年に、最初の万国正義院選挙を実施することを発表しました。

1961年には、国際バハイ評議会のメンバー選出方法が変更され、全国精神行政会のメンバーによる選挙へと移行しました。そして、宣言通り1963年4月、世界56カ国の全国精神行政会を代表する人々によって、最初の万国正義院メンバーが選出されました。この選挙日は、十年改革運動の完了と、バハオラがその使命を公に宣言したリズワンの庭での出来事から100周年という記念すべき時期と重なっていました。以来、万国正義院はバハイ信教の世界的な最高機関として活動を続けています。

選挙プロセス

万国正義院のメンバーは、世界中の成人バハイ信徒による多段階かつ無記名投票方式で選出されます。この選挙プロセスには、候補者の指名や選挙運動は一切存在しません。被選挙資格は、世界中のすべての成人男性バハイ信徒に開かれています。

選挙は5年ごとに行われ、各国の全国精神行政会または地域精神行政会のメンバーが投票を行います。これらの精神行政会メンバー自身も、各地方のバハイ信徒によって選ばれています。投票者は、自らが最適と考える9名の成人男性バハイ信徒に投票します。投票は郵送または代理人によって運ばれる不在投票も認められています。最も多くの票を得た9名が、万国正義院のメンバーとして選出されます。

女性は万国正義院のメンバーになる被選挙権を有していません。アブドル・バハはこの点について、「このことに関する英知は、将来明らかになるであろう。女性と男性は精神性（霊性）において等しい」と述べています。この問題に関する更なる情報は、バハイ信教における性と平等に関する記述を参照してください。

最近の主要な選挙は2013年4月29日に実施されました。この際には、157カ国から1,000人を超える全国精神行政会の代表者が、ハイファにあるバハイ世界センターで開催された第11回国際バハイ大会に集結して投票を行いました。会場での直接投票に加え、約400票の不在投票もあり、総計1,500票以上が投じられました。この選挙は、1963年の最初の選挙から50周年という節目に行われました。

職務と責任

万国正義院は、バハイ共同体全体と個々の信徒の生活において、多岐にわたる重要な職務と責任を担っています。その主な役割は以下の通りです。

バハイ信徒一人ひとりと共同体全体の精神的な資質の向上を促進すること。
バハイ信教の聖典に記された言葉や教えを厳密に保全すること。
世界各地のバハイ共同体を抑圧や迫害から守り、保護すること。
共同体の精神的な発展を促進し、バハイ信教の管理運営の中心としての役割を果たすこと。
共同体の成熟と持続的な成長を促進し、適切に管理すること。
個々のバハイ信徒の権利、自由、そして自発的な行動（発議権）を保護すること。
バハイ信教の定められた法と原則を適用し、遵守を促すこと。
聖典に直接規定されていない事項について、時代の変化や必要に応じて新たな法を定めたり、既存の法を廃止または変更したりすること。
バハイ法の違反があった場合に制裁を宣告し、それに関連する紛争の仲裁や調停を行うこと。
バハイ信教の所有する宗教資産を管理し、ホゴゴラなどの様々な基金を適切に運用・処理すること。

さらに、バハオラは万国正義院に対し、人類全体の幸福に積極的に貢献することを教えています。具体的には、世界各国の間に恒久的な平和を確立するために、人々を教育し、国家の確立を支援し、個人の安全と名誉を保護することを保証する役割も担っています。

もう一度検索