三井住友銀行尾道支店

三井住友銀行尾道支店：住友銀行発祥の地

三井住友銀行尾道支店は、広島県尾道市土堂に位置する、長い歴史を持つ支店です（支店コード：602）。その起源は1873年（明治6年）に住友家が開設した「住友家尾道分店」に遡ります。尾道は中世から港町として発展し、近世には広島藩の台所として繁栄しました。1878年には県内初の国立銀行である第六十六国立銀行が開業するなど、商業地としての地位を確立していました。

住友家の拠点として

1892年（明治25年）、「住友尾道支店」に改称。前年には山陽鉄道（山陽本線）が尾道まで開通し、住友家の主要事業であった別子銅山（愛媛県新居浜市）との中継基地としての役割を担うようになりました。支店では銅山の物品調達や、自己資金による物品抵当金融事業である並合業が行われました。1893年（明治26年）には、尾道から新居浜への住友専用航路が開通し、その重要性はさらに高まりました。

住友銀行創業の地

尾道支店は、住友グループにとって特別な場所です。1895年5月4日には、合議制を初めて導入した第一回住友家重役会議、通称「尾道会議」がこの支店で開催され、住友銀行の創業が決定されました。この決定は、住友の主要事業を銅山から銀行業へと転換させる大きな転換点となりました。

住友銀行尾道支店の誕生と発展

1895年（明治28年）11月1日、住友尾道支店は廃止され、新たに「住友銀行尾道支店」が開業しました。これは、住友銀行にとって全国初の支店となりました。

1904年（明治37年）には、当時の尾道の金融街「銀行浜」に近代的な支店が建設されました。木造平屋、モルタル仕上げの外観、正面の3連半円アーチ窓が特徴的な建物は、住友本店臨時建築部（現日建設計）の野口孫市が設計を手がけました。

1938年（昭和13年）に現在の土堂1丁目に移転。2001年（平成13年）にメガバンク三井住友銀行が発足した後も、支店は廃止されることなく「三井住友銀行尾道支店」として存続しました。福山市に福山支店が開設されましたが、法人専用の空中店舗で個人客に対応しておらず、ATMも設置されていないため、現在も尾道支店が備後地方の拠点となっています。2019年（令和元年）7月22日には、2代目の支店から隣接地に新築移転し、3代目の尾道支店が営業を開始しました。

旧支店の活用

明治期に建てられた初代の支店建物は、カフェ、海運局、市役所分庁舎として利用された後、尾道市労働センターとして残っています。現在、文化財としての具体的な活用が検討されています。2代目の建物は、2020年（令和2年）に尾道市重要文化財に指定され、尾道市が購入・改修の上、「まちなか文化交流館」（愛称：Bank）として2023年（令和5年）5月1日にオープンしました。

参考文献

小谷範人「住友銀行はなぜ尾道で産声を上げたのか －尾道と住友との古い関係－」『尾道市立大学経済情報論集 No.12』、尾道市立大学、2012年12月20日

関連項目

第六十六銀行：1897年に第六十六国立銀行から改組。藝備銀行を経て広島銀行の前身の一つ。
おのみち歴史博物館：旧尾道銀行本店。広島銀行尾道東支店を経て博物館として活用。

外部リンク

三井住友銀行

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