三八式十二糎榴弾砲

三八式十二糎榴弾砲の概要

三八式十二糎榴弾砲（さんはちしきじゅうにせんちりゅうだんほう）は、大日本帝国によって1911年に制式化された榴弾砲です。この火砲は、1904年に始まった日露戦争における日本陸軍のニーズを背景に、ドイツのクルップ社に発注されたものの一つです。

歴史的背景

日露戦争中、日本陸軍は新たな火砲を必要としており、クルップ社に近代的な火砲の設計を依頼しました。その結果、克式十二珊榴弾砲の更新を目的とした中量級榴弾砲が誕生しました。クルップ社は日本陸軍が求める仕様に若干の調整を行い、設計を流用して迅速に製造を始めましたが、日本に到着するのは奉天会戦の後であり、日露戦争中には使われませんでした。

制式化と設計

1911年、三八式十二珊榴弾砲として正式に採用され、その後、昭和に入ると名称が三八式十二糎榴弾砲に改められました。この榴弾砲は、段隔螺式の閉鎖機を採用し、装薬は可変式の分離薬筒を用いています。特に特徴的なのは、一号方形薬と無煙小銃薬を混用する珍しい装薬方法であり、これにより展開した火力を調整できました。

運動性能と運用

比較的軽量であり、6馬輓曳での運動も可能だったため、野戦重砲としての運動性は高いものでした。しかし、日本陸軍の兵器運用の方針により、採用後に12cm榴弾砲は兵器体系から外され、国産化や後継砲の開発も行われなかったため、主に予備的な役割で使われることが多かったのです。

実戦での運用

三八式十二糎榴弾砲の初陣は1937年の日中戦争において、野戦重砲兵部隊に配備された際でした。しかし、装備された弾薬は壊滅的な効果を持つ榴霰弾と対ベトン用の破甲榴弾のみであり、通常の榴弾は不足していました。そのため、本来の役割である榴弾砲としての機能を発揮することができませんでした。

1940年には、他の砲との併用や新設計の榴弾砲との関係もあり、三八式十二糎榴弾砲は一時的に再編成されつつも、実戦ではその性能不足が顕在化しました。

大戦末期の活用

大戦の終焉が近づくと、旧型の三八式十二糎榴弾砲を自走化する試みも行われました。九五式軽戦車を基にした、試製四式十二糎自走砲「ホト」がその代表例です。このように、戦局の変化に応じて柔軟に役割を変えていく姿勢が見られました。

終わりに

三八式十二糎榴弾砲は、大日本帝国陸軍において重要な役割を果たしていた火砲であり、その歴史は軍事技術の進化や戦争の風景を映し出しています。今やその姿は歴史の中に埋もれていますが、当時の戦力の一端を担っていたことは間違いありません。

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