三六式無線機

三六式無線機について

概要

三六式無線機（さんろくしきむせんき）は、日本海軍が1903年に採用した無線電信機です。この無線機は特に日露戦争の日本海海戦において重要な役割を果たし、戦果に大きく寄与しました。三六式は、日本海軍が正式に採用した無線機としては二代目にあたり、前任の三四式無線機の技術を基にさらなる改良が加えられました。現在では、実物が横須賀にある記念館「三笠」の無線電信室に復元展示されており、レプリカも無線通信歴史展示室で見ることができます。また、2017年には国立科学博物館によって重要科学技術史資料として登録されました。

開発の経緯

無線通信の黎明期である19世紀末から20世紀初頭、日本は無線機の開発に着手しました。特に、1900年には日本の通信技術者たちが千葉県の津田沼と横須賀の大津間で実験を行い、通信距離54kmを達成しました。この後、1901年に開発された三四式無線機は、当時の艦隊行動範囲に対して通信距離が不足しているという課題を抱えていました。このため、海軍は無線機開発に対する集中努力を行い、横須賀海軍工廠で新しい通信技術の開発に取り組みました。

その結果、ドイツのシーメンス社の技術を取り入れ、インダクションコイルの国産化が実現し、通信距離が200海里にまで延びることとなりました。そして1903年、三六式無線機が誕生し、その通信距離は1,000kmに達しました。この無線機は、全艦船に搭載されることになり、日本海海戦までにはすべての大型艦艇に装備されました。

日本海海戦での活用

日露戦争中の1905年、日本海海戦において三六式無線機は実際に使用されました。戦闘発生前の午前2時45分、仮装巡洋艦「信濃丸」が病院船「オリョール」の灯火を確認し、その後、敵艦隊の存在を伝える暗号電報を発信しました。この情報は巡洋艦「厳島」を経由して連合艦隊司令部に届き、司令長官である東郷平八郎大将は艦隊の出動を命じました。このように、戦況において連合艦隊が無線電信を駆使した結果、優位に戦闘を進めることができました。

構造と技術

三六式無線機は、火花送信機とコヒーラ検波器で構成されています。この無線機は、同期回路が存在しないため、アンテナの長さによって周波数を調節しました。送信電波はピーク周波数を持ちますが、受信機もピーク選択性に欠け、多くの通信を同時に行うことは困難でした。また、受信出力は印字式となるなど、当時の有線式電信に倣ったものでした。

後継機種の開発

三六式無線機の設計はその後の無線技術に大きな影響を与えました。1907年には後継機の四〇式無線電信機が完成し、さらに1910年には四三式無線電信機が実用化されました。四〇式は交流を利用し、さらに四三式は同調式の送信機と受信機を組み合わせることで、性能が大幅に向上しました。日本海軍としては、四三式が初めての同調式無線機となり、以後の通信技術の発展に寄与しました。

まとめ

三六式無線機は、日本海軍にとって重要な技術的進歩でした。この無線機の導入は、戦局の情報収集能力を高め、結果として日本の海軍力を大きく向上させる要因となったのです。

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