三司

三司（さんし）の概要

三司は、中国の五代十国時代から北宋にかけて、国家の財政を管理した重要な部署です。特に、唐の律令制度においては、財政に関する権限は主に尚書戸部に集約されていました。この戸部の下には、土地や住民、税の管理を専門とする戸部曹と、財政支出を担当する度支曹が存在していました。

しかし、玄宗以降の財政難に直面し、従来の制度だけでは対応しきれない事態が発生しました。そこで、新たに設けられた度支使や、塩・鉄の専売を管理する塩鉄使などの専門職が登場し、財政を支える体制が整えられることとなりました。

三司使の設置

後唐の長興元年（930年）に、これらの部署を統括するために三司使が新設され、これが財政の最高責任者となりました。この体制は北宋時代に引き継がれ、三司使は全体の財政を指導する立場として、宰相や執政に次ぐ重要な役割を果たしました。この三司には、長官としての三司使、副長官としての副三司使が置かれ、さらにその下に戸部、度支部、塩鉄部が存在しました。各部門にはそれぞれ、長と副使が一人ずつ、そして3人の判官が配置されていました。

財政機構の監視と監査体制

財政に関する機関が増える中で、当然ながら監察機関による監役が必須となりますが、この時期の御史台には十分な財政に関する知見が欠けていました。そのため、三司の活動に対する監察は実質的には三司自らによって行われていました。各部にはすでに会計監査を担当する勾院が存在していましたが、その後、これを統合する形で磨勘司や帳司といった新たな部署も設けられました。

これらの部署により、会計監査が一元化され、より効率的な監査体制が構築されることとなりました。また、取り立てを行う理欠司や、官吏の不正を摘発する推勘司、業務の労働者名簿を管理する兵案など、多数の関連機関も設置され、三司は農業、商業、税収、労働者の管理といった幅広い事務を一手に引き受ける巨大な組織へと発展しました。

王安石の改革

しかしながら、このような状況に対して、後の北宋の宰相である王安石は、熙寧2年（1069年）に制置三司条例司という新たな機関を設けることにより、三司の権限を分散させる改革を試みました。これにより、三司は徐々に財政関連の文書を主に扱う役割へと変更されました。その後、王安石の退陣後には元豊の改革の一環として、この三司が戸部に吸収され最終的に消滅することになります。

三司は、長い間にわたり中国の財政の中枢として機能してきた制度であり、その運用や改革の過程は、歴史的な財政政策の変遷を示す重要な事例といえるでしょう。

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